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BLは最初からパラレルワールドであり、すき間産業です。

1970年代に流行した「男女別学時代の寄宿学校における男子生徒同士の特殊な交際」という女流作品は、その作者である漫画家たちが実際に海外旅行した際に「当地の学校ではそのようなことが行われている」という情報をつかんだことによる……のではありませんね?

ごくふつうに日本の女性が「金髪の男の子が一杯いる学校って憧れちゃうわ」と思ったことと、昔の日本の学校では「下級生を女に見立てる」ということが行われていたと森鴎外先生などの本に書いてあるという知識が重ね合わされたものですね。

それは、あえて例えれば「ゴーリキーの小説を日本の時代劇ふうにやったら面白いんじゃないかな」というのと同じ思いつきです。海外の様子も、日本の伝統も、両方知っていることから見えてくる第三の道です。

ハイカラとバンカラの間です。古き言葉と悔やみつつ。

【SFとBLと、シラケ学生】

じゃあ、そんな世界はどこに実在するのかと問うならば、もちろん最初からどこにも「ない」のです。

それは、巨大戦艦が宇宙を航行し、ワープするのと同じ世界。猫型ロボットが街角を歩いていてもNASAが調査のための捕獲に来ない世界。現実とは位相のずれた「パラレルワールド」です。

申すまでもなく、二十四年組というのは「女性というのはひじょうに現実的・打算的なものだ」と思われていた時代にあって、例外的にSFや「幻想と怪奇」を読みこなす女たちであったわけです。

日本女性の進学率が上がった挙句に、「アプレ」の中から、ついにそういう女が現れたというわけです。

1970年代というのは、新左翼運動がひと段落して大学に静穏が戻ったので、大学進学率が急上昇した時代です。18歳以上のヤングアダルトが、科学的な小説も読めば、もっと空想的な漫画・アニメ番組も消費する。それだけの時間が取れるようになった時代です。

もう毎晩のように集まっては「権力打倒」とか「幻想打破」とか議論しないわけです。それを世人は「最近の学生はシラケた」などと言った。けれども実際には本人たちは白けてなかったわけです。やることが変わっただけです。

漫画・アニメという新しい表現技法を限界まで試してみる。限界のその先を探るという連中がいたのです。実際に書く・描く人は少数派です。でも多くの者が「読む」という形で新しい運動に参加したのです。

1970年代は、漫画が流行しただけではなく、映画にも若者が登場するようになった時代でした。金田一耕介というキャラクターは、前時代にはスーツを着用したダンディとして映画に登場することが多かったそうです。

けれども石坂浩二の演じる金田一は、上京したばかりの大学生の野暮ったさを備えている。それが自分では女性と恋愛したり、女郎屋に泊り込んだりすることなく、理性の力だけで問題解決するわけです。日本刀も拳銃も使わない。いわんや、背中に彫物もしていない。

彼が調査のために村役場を訪ねたり、文献を引っくり返したりする姿は、まじめな大学生そっくりですね。

学生がシラケたと思われた1970年代は、意外なほど、学生の時代だったのです。

【未成年者と未婚者の混同】

ところで、原節子が演じたタイピストにせよ、藤純子が演じた女侠にせよ、女学校を卒業した二十代の成人なんですけれども、劇中では「娘さん」とか「お嬢さん」とか呼ばれるものです。

海外でも若い成人女性を「ガール」(ギャル)と呼ぶもので、未成年の女性と未婚の成人女性を区別する呼称がないのです。

だから寺山修司のような中年男性が、若い成人女流による「現実的ではない男子校の様子を描いたマンガ」というものを見たときに、あァこれは世間知らずの娘さんが考えそうなことだ……と思うわけですね。

だから成人女性が描いたものなのに「少女の内面描写」になってしまった。

正確には、成人したが結婚していない女性の悪ふざけというべきアイディアだったのです。本人が成人しているから、空想が少々性的な領域に踏み込んだのです。それを子どもが面白がったというのが正しい構図です。

じゃあ、それを子どもに読ませたのは誰かといえば、前にも申しましたが、当時の出版社の社員である中年男性です。少女向け漫画雑誌の編集長。彼が「これを載せるには新しいヤングアダルト雑誌が必要だ」と判断しなかったのです。

【女性の反BL】

少女漫画読者にしろ、少年漫画読者にしろ、ふつうに「何々くんが好き」という女性ファンが二次創作BLをきらうのは当然です。

それは、なにも男性の少年漫画ファンの機嫌を取るために可愛い子ぶってるのではありません。彼女自身が「現実の同性愛者を否定するつもりはないけれども、私の何々くんはホモじゃない」と思うからです。

また二次創作者である女性に対して「私の大事な何々くんをあんたなんかのおもちゃにはさせないわ!」という敵対心を持つからです。

それは、女同士の闘いなので、むしろ男性ファン相手よりも手ごわいです。なぜなら女性に向かって「二次創作BLは女の子の弱者特権です!」とは言えないからです。

相手は「私だって未婚だけど変な想像したことないわよ! 男に縁のない職場でちゃんと働いてるわ! 女だからって二次創作BLでしかかせげないってことないでしょ!」と言えちゃうからです。

こうなったら、二次創作者のほうから議論を避けて引っ込んでいるか、「私は創作で生きて行きたいと思っています。パロディは漫画家(またはライトノベル作家)にとって重要な表現手段です。ご理解ください」と静かに申し上げるほかないです。

相手がいきり立っている時に、冷静な話し合いをするには、自分が落ち着いていることです。

それができれば、あなた自身が18歳になったばかりでも、立派な大人です。

【大人になるとは】

大人になる、大人であるということは、わざと下品な話をすることではありません。ずるい方法でおカネをかせぐことでもありません。自分の権利について冷静に話し合うことができること。相手の気持ちを考えることができることです。

世の中には、わざと「大人になれない」などと言って、ふてくされている大人もいます。本当に悪いことをわざとやったり、他人を傷つけることをわざと言ったりして、まだ子どもだからと言い訳する大人もいます。それで若返った気分を味わっているのですが、あなたが真似する必要はありません。

そういう人は、子どもをばかにしているのです。子どもに対して失礼ですね?

なお、女性は男性の肉体によって大人に「してもらう」のではありません。他人の権利と心情に配慮することは、心の問題なのですから、自分で気をつければよいことです。

いい女に、なってください。



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Misha

Author:Misha
スマホ時代にさからう評論系長文ブログ。冷静に通読できる大人の読者様を想定しています。

「若い人」に直接呼びかける文章は、18歳以上のヤングアダルト対象です。高校生は受験を最優先してください。

書く人は、新旧とりまぜて映画とアニメを見ながら文芸書に取りくんでみたり、昔の漫画を思い出したり、お国の先行きを心配したりしております。

記事中の色つき文字は、映画中の台詞・挿入歌からの引用です。あらすじは、あまり申しませんので、楽しみに御覧ください。取り上げる作品は、暴力・エロスなど特殊な要素を含んでいることもあります。

ときおり、耽美・BL・同人・LGBTに言及します。いずれの分野からも、偏見と差別と自虐がなくなるといいと思っております。

「二次創作の責任を二十四年組に押しつけるな」「実在同性愛者に甘えるな」が基調です。

全体として、二十四年組ファンが社会学者に物申すという珍しい構図。一部勘違い同人を叱責することによって全体を守るという意図もあり、ときにかなり辛口です。

記事は時々予告なく手直し・削除・分割しております。保存は個人的閲覧の範囲で、お早めに御随意に。転載・改変利用は固くお断り申し上げます。

解題


Casketとは、玉手箱。

でも検索すると棺桶がならびます。来世まで持っていきたい好きな作品の記録帳とご理解ください。