1960年4月、松林宗恵『太平洋の嵐』東宝

  03, 2017 11:03
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これが戦争だ。これが戦争だ。

製作:田中友幸 脚本:橋本忍・国弘威雄 撮影:山田一夫 美術:北猛夫・清水喜代志 録音:西川善男・宮崎正信 照明:小島正七 音楽:団伊玖磨 監督助手:田実泰良 特技監督:円谷英二

わが民族のあるかぎり、永久に語り継がれる若き魂の物語。(予告篇より)

昭和16年12月。日米関係は最悪の状態にあった。飛龍の男たちは最高だった。戦後15年の節目に明かされるミッドウェイの真実。必見の名作。

若干ショスタコーヴィチ調の楽曲に乗せてお送りする総天然色、東宝スコープ。スター俳優三人の名前の並べ方には苦労したろうなと気を回しつつ。まずは新高山に登ることになってしまったもようです。皇国興廃在此一戦。

オペラふうの音楽で劇的に盛り上げておりますが、画的にはすごく誠実です。兵の表情をよく捉えております……と言いたくなるほどのドキュメンタリータッチ。いい構図がいっぱいです。プロペラ廻してるのは実機? 実物大模型!? 驚愕のリアリズム。

実際の戦中を知っている人々による真正面からの再現であって、真摯な敬愛と追悼の念にあふれ、艦上描写・内地描写とも味わい深いです。飛行機乗りには娘はやれぬ。やれぬ娘が嫁きたがる。上原美佐は『隠し砦の三悪人』の雪姫。

橋本脚本は例によって俳優の口から状況説明させるんですが、監督は人物配置を工夫して、見応えのある画を作っております。

模型撮影班もカメラワークを工夫して臨場感を高めております。編集はたいへん緻密です。なお、初歩的アニメーションによって、かるく戦闘区域のお勉強もできます。

序盤は『ハワイ・マレー沖海戦』をカラーでリメイクできてよかったというところで、モノクロでは表現できなかった部分が美しいです。わずか20分間に投入された特技の努力の数々に眼をみはるばかり。セルフトリビュートというのか、懐かしい演出もあるようです。

ミニチュアワークは、愛らしいミニチュアであることは観りゃ分かるんですけれども、だからこそ、それがいかに丁寧に作られているか、日本人の仕事ぶりを拝見するのです。旋回の際の角度とかは言わない約束です。1時間20分くらいに、すごい仕掛けがあります。巻き戻し確認すること数回。

実寸大(俳優が演技している)場面はどうやって撮ったのかと思われたところ、飛龍の実物大模型を建造したのだそうです。(!!)

真珠湾は巨大プール。1960年代の日本の経済力が偲ばれます。

鶴田浩二が「海軍らしい紳士的な指揮官」という役でストーーンとはまっちゃうから不思議。第一報を待つ先任参謀の池辺さんが石筆で苛立ちを表す姿が印象的。渋くなった三船と藤田のツーショットはすごい画です。河津清三郎もいい撮り方です。赤城の参謀長はばかにいい顔だなと思ったら上原謙でした。(後で気づいてあわてる)

ミッドウェー方面の混乱は、何度観ても胸が痛むことです。つねに黙々と働く整備兵。大和は映さず、飛龍と赤城にしぼり込むとともに、艦橋とは別の場所における緊張感を表現したのが効果的。おなじ場面をどの視点で描くのか、創作の参考にもなると申せましょう。

アクション的クライマックスの後がこれほど大切にされた軍記ものも珍しく、真実の描写に徹したことは、もちろん話題性といったこともあるんですけれども、その禁欲的な描写が湛えた情感は、やっぱり映画人の良心を示しているといってよいと思います。

雷跡の美しさが悲しい。



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