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1990年代のBL論は、言い訳です。

1989年の「1.57ショック」、1990年前後の「M事件」、それによる「コミケ参加者は犯罪者予備軍」報道、1992年頃のコミック有害図書指定、1994年以降のゲイコミュニティから女性の言動に対するクレーム。

すべての背景となった、バブル崩壊。

一連の動きによって、社会全体に「反サブカル」の気運が盛り上がったのが1990年代です。

バブル景気に浮かれて、若者を甘やかしすぎた。奴らを遊ばせておくと、ろくなことをしない。とくに若い女の自由にさせ過ぎた。ここらで手綱を引き締める必要がある。

そういう「モラトリアム」の疑問視が起きたのです。

それに対して「だって女の子は躾が厳しいから仕方ないじゃないですか。ほっとくと摂食障害になっちゃうんですよ。BLでも読まなきゃやってられませんよ」という言い訳がなされたのです。

でも冷静に考えると、BLでなくてもいいのです。せっかくSFの知識があるなら、異星や異次元を舞台に、少女が一人前の活躍ができる理想的な物語を書いたっていいのです。女性だけのサッカーチームが男性チームを打ち負かす話でもいいのです。

それがバッシングされるからというなら、そこで引き下がってはいけないはずです。

また、女学校の教員や、美容師や、音楽の先生や、料理研究家や、人形のコレクターなど、伝統的に女性的とされる仕事をしつつ、結婚しない人というのも昔からいたわけです。

「いまや自活の手段として、BL作家(漫画家)という道も開けたので、それを選ぶ権利もある」という話なら分かる。

「本気でプロ創作家になりたいと思っている少女たちの道を男性の偏見で閉ざしてはいけない」という言い方なら分かる。

けれども、それなら尚のこと「他人の著作物に手を出すのはどうなんだ」と言えてしまう。もう森茉莉の時点で(女性を捨てて若者を拾ったという話だから)男性の自分本位に対する諷刺の気持ちがこめられているという批評が可能である。

だからこそ、森茉莉や竹宮恵子や栗本薫を踏襲して、オリジナル作品によって男性中心社会を諷刺しつつ、自分は独立したいというなら、俺も男だが、支援すると言える。出版社として、批評家として、社会諷刺も重要だと言える。でもよォ……。

男性漫画家の権利に「少女漫画家になりたい」という少女が手を出す件については、どうにも説明できないわけです。

まして、1970年代以来、その種の同人活動を続けている人というのは、とっくに成人しているわけです。1990年代に議論してるんですから。

1980年代にその種の同人活動を急成長させた世代も、1994年までに全員が成人しています。1989年に13歳の中学1年生だった人さえ、18歳以上の成人になったのです。

ここまで来て「まだ子どもだから」という言い訳は通用しません。

だからこそ「男性社会が横暴なので少女だった間にトラウマだらけになってしまった」という強力な被害者意識を必要としたのです。

それは最初から「悪いことをしたことを認めた人による情状酌量を求める意見陳述」というものだったのです。だから黒バス犯の言いぐさにそっくりなのです。

というか、黒バス犯のほうで真似したのです。

でも、実際の同人界にとっては、トラウマ原因論・弱者特権論は迷惑なのです。なぜなら「善悪の判断がつかない者が同人やっている」ということなら、犯罪者予備軍視を払拭できないからです。

あくまで成人の自己責任において、自分の好きで創作の道を選んだものが、必要に応じて著作権者と二次的利用者の間で冷静に話し合うことができるという前提でなければ、社会としても、プロとしても、同人自身としても、認めるわけに行かないのです。

が、フェミ的言い訳をいまだに引きずっている人もいます。若い皆さんは「いい歳してまだ言ってる」と思えばいいです。中年のトラウマごっこに付き合う必要はないです。

日本ではギリギリで1992年までバブル景気が続きました。その年に15歳だった人は1977年生まれ。つまりバブル時代を高校生以上として経験した人々は、今年で全員が40代以上になります。その成人としての発言の質が真顔で問われる時代が来たのです。



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Misha

Author:Misha
スマホ時代にさからう評論系長文ブログ。冷静に通読できる大人の読者様を想定しています。

「若い人」に直接呼びかける文章は、18歳以上のヤングアダルト対象です。高校生は受験を最優先してください。

書く人は、新旧とりまぜて映画とアニメを見ながら文芸書に取りくんでみたり、昔の漫画を思い出したり、お国の先行きを心配したりしております。

記事中の色つき文字は、映画中の台詞・挿入歌からの引用です。あらすじは、あまり申しませんので、楽しみに御覧ください。取り上げる作品は、暴力・エロスなど特殊な要素を含んでいることもあります。

ときおり、耽美・BL・同人・LGBTに言及します。いずれの分野からも、偏見と差別と自虐がなくなるといいと思っております。

「二次創作の責任を二十四年組に押しつけるな」「実在同性愛者に甘えるな」が基調です。

全体として、二十四年組ファンが社会学者に物申すという珍しい構図。一部勘違い同人を叱責することによって全体を守るという意図もあり、ときにかなり辛口です。

記事は時々予告なく手直し・削除・分割しております。保存は個人的閲覧の範囲で、お早めに御随意に。転載・改変利用は固くお断り申し上げます。

解題


Casketとは、玉手箱。

でも検索すると棺桶がならびます。来世まで持っていきたい好きな作品の記録帳とご理解ください。