1957年、木下恵介『喜びも悲しみも幾年月』松竹

  10, 2017 11:04
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誰も知っててくれなくたっていいさ。俺の苦労はお前が知っててくれる。

原作・脚本・監督:木下恵介 撮影:楠田浩之 美術:伊藤熹朔・梅田千代夫 音楽:木下忠司 録音:大野久男 照明:豊島良三 色彩技術:成島東一郎 特殊撮影:川上景司 監督助手:大槻義一 後援:海上保安庁

イーストマン松竹カラー。富士重工業株式会社LM1型「日光」機使用。花も嵐も踏み越えて、日本全国縦断ロケに出ました木下ブラザーズ。(カメラマンが義弟)

雪も波濤も乗り越えて、海国日本の四方を守るのは、妻と二人で灯をかざす人々。兵隊さんの活躍の陰にあった、もう一つの戦い。

鋭い構図、独特の間合い、てらいのない人間描写、理知と情愛に満ちた名台詞の数々、絶妙の忠司楽曲、劇中の楽器使用。木下調を満喫できます。

日本の空と海の色をかくも美しく再現した映像作品も珍しいかもしれません。なお特技班も大活躍の大迫力です。

諷刺と悲劇による戦争批判を乗り越えて、監督も次の一歩を踏み出したように思われます。佐田啓二はたびたび飛び出して行きます。

額にハラリと前髪を落としたダンディぶりによって灯台守りを最大限に美化し、賛辞と謝意を送っているわけですが、人物を点景にした美しい風景描写が無言のうちにその壮絶な勤務条件を観客に知らせるのでした。

やっぱり木下は、「甘えの構造」による犯罪を描くことによって社会諷刺するというよりは、自分の仕事をちゃんとやる人をそのまま撮るのが好きなのです。

全篇を通じて、現代でも珍しいくらい新憲法的な夫婦愛を強調した明るいヒューマンドラマですが、アプレゲール的社会風潮への疑問も忘れずに織り込んでおります。なお、子役を選ぶのは本当にうまいなと思います。

戦後12年。

終戦の年に小学生だった子が、当時の結婚適齢期に達する頃合だったわけです。『二十四の瞳』終盤にも、その年の低学年生たちが登場していましたが、監督には、あの終戦の年から撮影時点までの年月を何度も振り返ることが必要だったのでしょう。

弔うとは、くりかえし思い出し、語り合うことなのです。



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