1959年1月、木下恵介『風花』松竹

  13, 2017 11:01
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これからはお前と一緒に生まれ変わるよ。

製作:小梶正治 脚本:木下恵介 撮影:楠田浩之 美術:梅田千代夫 音楽:木下忠司 録音:大野久男 照明:豊島良三 監督助手:大槻義一 長唄:杵屋六左衛門社中 振付:花柳啓之

出演:岸恵子、有馬稲子、久我美子

熟練の77分。農地改革の後。ひとつの時代の終わりと始まり。

『遠い雲』『夕やけ雲』は町暮らしの住みにくさ。こちらは山村暮らしの住みにくさ。『楢山節考』で大胆な和製オペラ(ミュージカルというよりはオペラ)を試した後。

『喜びも悲しみも幾年月』の真逆で、ただでさえせまい村の中でほとんど舞台を移動せず、時間を自在に操るという、たいへん大胆な着想。冬枯れの景色の中に赤が冴えます。忠司音楽も練達度を深めております。

祖母・母・娘という女三代記にひねりを加えたものですが、真の主人公は男子かもしれない。複眼的なのが木下さんのいいところ。

ようするに「ヒロインがお嫁入りするまで」の経緯であって、女性映画監督なら一度は通る道かと思いますが、『日本の悲劇』でも見せた、ふいに回想シーンに入る木下調は、観客の理解力を信じてボールを投げて来ているわけで、知的な刺激となって心地よいことです。

「グランドスコープ」をフル活用した雄大な風景は目が覚めるように美しいです。昔の豪農の家はほんとうに大きかったようです。自動車だけが近未来的にダンディです。長火鉢ではなく櫓コタツを使うようになったらしいです。裏庭のセットはものすごく丁寧に作り込まれております。笠智衆は『花咲く港』から一貫して監督の良心代表。

『野菊の如き君なりき』の裏返しとも言えるお話は、1959年現在。すでに女子大に行く人もいたようです。男女同権を(ひとつ前の世代の)女性のほうがいやがる姿が見られます。

女優のメンバーが新しくなったのも印象的です。稲子はやっぱりピリカです。監督の脚本技も、あまり長々しい台詞を書く人ではありませんでしたが、新しい境地に踏み出したようです。

よく考えると、やっぱり戦争から始まった悲劇なのですが、女性の意地という名の自己満足をやや遠めに、男の純情にグッと寄り添うカメラ使いの抑揚には冷静な諷刺魂も感じられるようです。とはいえ、女性の人生を鋳型にはめるのは、いつの時代も周囲の陰口のようです。

『野菊』もそうだったんですが、地主といえども、あるいは地主だからこそ、小作人たちの陰口をひどく恐れていたわけで、「地主だから威張ってる」という単純な構図を取らない監督(脚本)にとって、真のテーマは義経も恐れた「人口」だったのかもしれません。『楢山節考』でも強調されていましたね。

もはや戦後ではない1960年代が自由な時代でありますように。



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