1960年10月、三隅研次『大菩薩峠』大映

  13, 2017 11:04
  •  -
  •  -
剣を学ばん者は、まず心を学べ。

製作:永田雅一 原作:中里介山 脚本:衣笠貞之助 撮影:今井ひろし 録音:大谷巌 照明:岡本健一 美術:内藤昭 音楽:鈴木静一 色彩技術:木浦義明 剣道指導:森田鹿造 衣装考証:上野芳生 助監督:井上昭 

映画は大映。甲源一刀流、音無の構え。酷薄な美剣士の増長した顔つきと、華麗にして力強い魔剣をとくと拝見いたしましょう。開始30分以内に見せ場が連続する大娯楽活劇。

カラー撮影、ワイドスクリーン。耽美的なまでのキャラクターのフィクション性と、雄大な野外ロケ、豪壮な大映セット、絢爛たる衣装と、小道具の様式的美意識の共存。

登場人物も多い長編ですが、主人公の心理描写を重視したうえで、台詞を最低限に抑えて画で見せる、監督&脚本の見事な連携プレーです。

主人公は竜之助ですが、この裏では内田吐夢が錦之助の『宮本武蔵』(1961年5月公開)に取り掛かっていたですね。(戦わせてみたかった)

雷さま(1931年生まれ)は『破戒』よりも前なんですが、時代劇らしい重々しいお芝居を心がけておいでのようです。笠智衆は風格が増しました。島田正吾がまだ若いです。待ってました新国劇。ロングな構図で堪能できます。剣筋もいいけど体術もね。

ミス日本(山本富士子。1950年度)は1931年生まれなので、役柄を考えるとだいぶサバ読んでますが無理なく可愛いらしく、眼に優しいです。

中村玉緒はまなじりが吊り上がって、肌がきれいで、武家の子女らしい気の強さと清潔感を備えていて、いいんですが、気の強いだけの女はじゃっかんめんどくさいです。

女形出身の衣笠(1896年生まれ)の脚本は、さすが女心のダメなところもよく御存知というべきか。言葉使いは古風な品格と切れ味の良さが同居して味わい深く。

三隅(1921年生まれ)は衣笠の弟子で、監督デビューは1953年『丹下作膳・こけ猿の壷』。ここで会ったが7年目の39歳ですが、すでに大ベテランの風格。

人物の周囲に余白を大きく撮った美しい構図、絶妙のカメラワーク、多彩な場面を細かく刻んだ編集。アクションは役者を信じて遠間に腰を据えて。ホラー調の演出は繊細に。

ちょっと珍しいほどの見応えです。



Related Entries