1964年7月、篠田正浩『暗殺』松竹

  13, 2017 11:05
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こうして刀身を透かすと、刃の地肌に匂い立つ湯走りが星のように点々と青く冴えてくる。

製作:山内静夫 原作:司馬遼太郎(「幕末」より) 脚本:山田信夫 撮影:小杉正雄 美術:大角純一 音楽:武満徹 録音:福安賢洋 照明:一瀬与一郎 助監督:貞永方久 剣技指導:堀田辰雄

太平の眠りを覚ます蒸気船。文久三年、勤王リアル。武士には勝修羅がよく似合う。七星剣を持つ男の明日はどっちだ!?

丹波哲郎(1922年生まれ)が幕末の野心家・清河八郎(1830-1863)の裏表を演じきった快作。『宮本武蔵』では情けない本位田又八だった木村功も、こちらでは凄みのきいた表情を見せます。

カラーテレビ普及の世にあえて問うモノクロの美学。監督の年齢を考えると、ものすごく野心的といえるでしょう。

監督(1931年生まれ)にとっては『心中天網島』よりも『乾いた花』よりも前なんですが、独特の照明使いとカメラ使い・精巧な編集技がすでに確立しております。

勤王vs.佐幕の不安に満ちた世相、学生運動に似た志士たちの荒削りな純情さが見事に再現され、実録フィルムみたいです。楽器を取り落としたような武満音楽が響き渡ります。寺田屋さんはご災難でしたね。

佐田啓二(1926年)の初登場シーンは、一瞬気づかずにやり過ごして巻き戻してみたり。お芝居がすごくうまくなりました。どうしても楽器を構える姿が定番らしいです。残念ながら最晩年の出演作となってしまいました。

山岡さんと芹さんは、地味な俳優さんながら印象的です。

武家の使う二人称が「きみ」なのがえらい違和感ある脚本ですが、実際に学生の鑑賞を意識しているのでしょう。会話そのものは抑制がきいた、大人のものです。

映画全体の視点は基本的には勤王寄り。当然ながら日本の学生運動は、打倒権力といっても皇室に弓引くことはなく、時の行政府が相手ですから、この当時と構図が同じだったのです。

撮影当時として、劇中の時代からちょうど100年経ったわけですが、新左翼運動が世界的に湧き上がるのはこの後ですから、一歩先んじて歴史に学び、警鐘を鳴らすという意味合いもあったのかもしれません。

『黒い画集・寒流』が1961年、『白い巨塔』が1966年だったことを思うと、戦争の反省と終戦直後の貧しさを描こうとしていた1950年代を脱して、新たな権力が確立された1960年代をいかに生きるかというのが観客たちに共有されていたテーマだったのでしょう。





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