漫画・アニメバッシングの根本。

  10, 2017 11:01
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「汗水たらして働く」という言い方がありますが、国会議員・官僚・事務員・教員などの多くは、汗だくになって働いているわけではありません。

汗水たらして働くのは、端的には農業従事者です。また漁業・林業・建設業・運搬業などです。

つまり、食糧獲得および獲得した食料を運搬することは、ひじょうに賛美されるわけです。人間も動物ですから、食べることが最も重要だからです。

いっぽう、飲酒・賭博・歌舞音曲・性的娯楽など、一時的に興奮しただけで食糧備蓄として残らない活動というのは、賤視されやすいのです。

それを専業とする人々は「きれいな着物を着て、遊びながら暮らしてるんだから、いいご身分だ」とか言われちゃうわけです。

若者がそういう遊びに夢中になったり、都会へ出てそういう遊びがしたいという夢を持ってしまうと「汗水たらして」働かなくなる。ばかばかしいとか言うようになる。遊興産業は若者を誘惑し、堕落させる。

そういう危険視は、洋の東西を問わず、ずっと昔からあるのです。

映画産業も、ありていにいって、なくてもいいものをわざわざ作っている。人間が映画フィルムそのものを食べないと生きていけないということはないのに、わざわざセットを建てて、衣装をそろえて撮る。

それは根本的に無駄なものであり、文化史的に見て「遊び」であり、食糧生産に対して余暇活動です。映画人は「好きなことだけして暮らしている」と厭味や皮肉を言われやすいのです。

だから、映画監督は芸妓として生きる女性に共感し、その苦労を描き出したのです。

能楽師も、うんと昔は「河原者」と呼ばれて差別されていたという話がありますね。それが時の権力に気に入られ、それを理解できると出世につながるということになると、我も我もと謡を覚えようとする。これが現実。

だから麻生さんが漫画好きだというと、漫画ファンが歓迎するわけです。

つまり漫画家も、その読者も「自分の好きなことだけして暮らしている」連中として差別されやすいのです。

それが小説よりも、映画よりも新しいという理由によって、よりいっそう差別されやすいのです。

昔は小説も低俗なものだと思われていたらしいです。時代とともに技法が鍛錬され、精神性が高まると、評価も高まるんだけれども、低俗な娯楽小説も存在し続けますね。

けれども映画というものが登場すると、相対的に古い小説のほうが高級なように思われる。時代とともに映画もレベルアップするけれども、ピンク映画も存在し続ける。でもテレビドラマに対して「映画を撮る」というほうが、なんか高級っぽい感じがする。

漫画もレベルアップするけれども、低俗な娯楽漫画も存在し続ける。

もともと「コミックマーケット」はオリジナル漫画同人会の集合体で、そこに出展されるものは(今さら確認しなくていいですけれども)当初から玉石混交だったのが当然です。すべての同人は平等であり、アマチュアそれぞれの自発ですから、一定の編集方針・審査基準というものがない。

現在でもその通りだから、コミケというところは、最も後発の漫画という表現分野の中でも、最も低俗なものが集まる場所として差別を受けやすいのです。

厄介なのは、ほんとうに農業・漁業の人が「俺たちを見習って働け」と言って来るのではなく、都市部で会社員として暮らす人々が、自分ではデスクワークしているだけで「汗水たらして」働いていないのに、他人に向かって汗水たらして働くことの尊さを知れとか言っちゃうことなのです。

ここに「ルサンチマン」という言葉が浮かんで来るわけで、働けど働けど我が暮らし楽にならざる一億総中流庶民の不景気に対する不満が、弱い者イジメとなって、漫画の自由を抑圧しようとしているという構図。

それ自体は、いまさら申すまでもありませんけれども、厄介なのは「新しいもの=伝統的なものより低レベル」という差別意識が、ギリギリで1990年代まではそのまま通用したのです。

けれども漫画・アニメファンが中高年に達してしまったので、バブル崩壊後の不況しか知らない世代が、バブル時代を自慢する中高年漫画・アニメファンに対して強い怨嗟の念を持っているという、逆転現象が起きているのです。

したがって、伝統的な年長者による漫画の異端視と、若年世代の復讐心が、1980年代に急成長した「二次創作」および同類の市販漫画を挟撃している。これが現状。

だから、同人側は、つねに二面作戦・三面作戦です。

あちらを立てればこちらが立たず(著作権問題でいいこと言ったつもりになると、青少年健全育成問題で墓穴)ということになりやすいので発言には注意しましょう。

(現状について来られず、「1980年代にはうまくやっていた」という昔話しか出来ないのであれば、無理しなくていいです)



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