1961年3月、松田定次『赤穂浪士』東映京都

  12, 2017 11:04
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正しきお裁きのない世は闇にござりまする。

製作:大川博 原作:大仏次郎 脚本:小國英雄 撮影:川崎新太郎 照明:山根秀一 美術:川島泰三 音楽:富永三郎 

大石内蔵助:片岡千恵蔵 脇坂淡路守:中村錦之助 堀部安兵ヱ:東千代之介 浅野内匠頭:大川橋蔵 吉良上野介:月形龍之介 堀田隼人:大友龍太朗 千坂兵部:市川右太衛門 畳屋伝吉:中村賀津雄 大石主税:松方弘樹 上杉綱憲:里見浩太郎 立花左近:大河内傳次郎 清水一角:近衛十四郎 片岡源五エ門:山形勲 堀部弥兵ヱ:薄田研二 

春の名残を、春の名残をいかにとやせん。東映創立十周年記念、ベテラン名優ぞろいの大オールスター。(嬉)

総天然色、ワイドスコープ。公開月にふさわしく、爛漫の元禄絵巻から始まります。時代劇がいちばん良かった頃と申しましょうか。オープニングタイトルバックも美しいです。

ダイナミックなクレーン撮影でお送りする名場面続きの大巨編は、ものすごい人数とお衣装とセットと小道具が並びます。1960年代の日本の景気をそのまま反映しているのでしょう。湯女・遊女の風俗が魅力的です。

刃傷があって、討ち入りがあるというプロットは決まってるわけですから、その間をいかに描くかが演出家の仕事なわけですが、まだ1980年代前半までは、年末になるとテレビで赤穂浪士のドラマが放映されるお約束がございました。

演出はさまざまに工夫が凝らされ、浪士が生活苦に負けて脱落していく様子が丁寧に描かれたり、夫人たちの目線から描いたり、討ち入りの段取りをナレーションで細かく説明してくれたり。

これはメイン俳優の年齢からいっても、同世代の観客たちが戦前から『忠臣蔵』をよく知っていることを前提にしているもののようで、ナレーションによる解説はなく、むしろ千坂・脇坂・伝吉が観客の代表(ワキ)となって、シテたる内蔵助を外側から見た構図になっているかと思います。

歌舞伎の心得のあるベテラン達による重厚な男の友情描写をいくつも重ねた物語の主脈に、町方の軽妙な様子と、待ってましたの剣戟シーンを差しはさみ、すごい早さで進めて参ります。

畳屋伝吉は脇坂淡路と二役か? というほど似てますが、前者が後者の甥っ子です。

ものすごく贅沢に「尺」を取った男と男の眼の芝居は、いずれも音楽と編集の話法がとてつもなく効果的。

女性キャラクターは脇固めとして、それぞれに自己主張があり、良いアクセントになっていると思います。

女優というのは、ミラ・ジョヴォヴィッチくらい活躍するか、最初から女性映画として位置づけられたものでないと、男のドラマの中だるみ要素になってしまうことがあるので、このくらいの分量でいいと思います。

太平洋戦争を生き延びた女たちの生活苦を描いていた1950年代。女性の「社会進出」が目立ち始めた1970年代。その間にあって、男と男の人生二人旅が流行したのが1960年代。

これはこの時代の日本でなければ撮れない映画だと思ったことです。

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