「同人誌とはアニパロです!」~巨大な密室の太平の眠り

  13, 2017 11:33
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2006年に、今でいう二次創作BLの出展者・ファンについて解説すると称する暴露本の一種が発行されたことがあります。

じつは筆者自身の低レベルっぷりを暴露してしまっただけなんですが、その中に表題のような文章がありました。これは、ある時期に二次創作BLに親しんだ人を示す特徴的な発言です。

二次創作BLという言葉は、2010年代に入ってから生じたもので、TPPによる著作権保護の強化という話題に関連して、男性漫画家・赤松健が「日本の二次創作は成人女性向けBL化」とぶっちゃけてしまったので、それを縮めた言い方として、以降急速に広まったものです。

それまでは排他的に「二次創作としてのBL」を指示する単語がなく、プロ作品と混同した上で隠語が用いられていたのですが、どうしてもTPPによる著作権問題の文脈では、プロ作品は関係ないが、二次創作だけを議題にするという必要が生じたので、区別が明確になったのです。

で、話を戻すと、冒頭の筆者が「同人誌」を購入したのは1980年代前半のことだそうで、その頃にはそういうわけで「アニパロ」という呼称が用いられていたのです。

字義通りには「アニメのパロディ」ですから、BLとしてのそれを排他的に示すわけではありません。まさにBLとしてのそれを排他的に示す単語がなかったので、アニパロという総称を二義的に隠語として用いたのです。

が、これではアニメのパロディであることが一目瞭然であり、アニメ権利者にとっては権利問題の存在を知らせる指標になってしまいます。

昭和50年代というのは、多子世代の成長期だったので、テレビの人気者を利用したキャラクタービジネスの成長期でもあって、無断利用したものに関する著作権裁判もいくつか起きた時代だったのです。

言ってるそばからプロ漫画家の一人による二次創作の差止請求が(コミケとは違う場所で)起きてしまい、ほぼそれを機会にアニパロという言葉の使用が下火となりました。

かわって「山も落ちも意味もない」という自虐的な隠語の使用が盛んになったというのが1985年頃までに起きたことで、その際に、十年も先行していたプロ作品にまでさかのぼってその隠語が適用されるという用法も生じてしまい、当方はそれ以来ずーーっと「それは誤用だ」と思ってるものです。

でっ、もう一回話を戻すと、アニパロと呼ばれていた当時の二次創作BLは、小説が主流だったのです。ストーリー漫画をきちんと描ける人が少なかったのです。

文芸としての二次創作は「ロリ」「ショタ」の語源を考えると、かなり古くから成立していた可能性があります。コミケは本来、名前の通り漫画同人会に招待状を発して集結させたイベントですから文芸同人の出る幕ではないのです。

けれども別名を「同人誌即売会」と称したので、文芸同人誌も出品されて来たのです。

それをコミケ初期の主宰者が嫌ったので、分裂の一因となった。漫画の未来を試行錯誤する人にとって、畑違いの人々に占領されるのは耐えがたかったことでしょう。

本来、文芸同人は自分で「ノベルマーケット」または「アニパロマーケット」を立ち上げるべきだったのです。

それを女性がしなかったというなら、これは「男性の活動に便乗する」という女性性の指標の一つです。時あたかも非行文化の流行期。それは男性の運転する車の後席に乗せてもらったレディースだったのです。

で、みたび話を戻すと、冒頭の解説書は、作例としてインターネット掲示板に投稿された文章を無断転載しました。それはまさに、筆者が「アニパロ」とは小説であると信じている証拠なのです。

それは、ギリギリで1990年代初頭までに特徴的な現象なのです。その後、二次創作系漫画同人のプロデビューによって、漫画同人が活性化し、有害図書指定運動にもめげず、漫画の時代が来るのです。

なお、無断転載の件は、言うまでもなく著作権意識の低さを示しているわけで、TPPによる著作権議論が盛んになったのは、この後なわけです。

日本は、つねに黒船によって、太平の眠りを覚まされるのです。



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