少女だけが注目されたのです。~不況時代の営業戦略2

  19, 2017 11:03
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総務省が発表している出生数の変動を示すグラフを見ると、1974年と1975年には、ものすごい落差があります。

もはや申すまでもないように、年間出生者数は1975年に前年比で激減して以来、二度と回復していません。右肩下がり。

1975年に生まれた子たちが15歳になるのが1990年です。その後、待っても待っても子どもの数は増えないわけで、玩具会社・出版社などにとって死活問題となったことでしょう。

いっぽう、1974年までに生まれた世代は、1994年までに全員が成人しました。市販品としてのBLは、この人たち(の一部)に対しては、事実上の成人向けとして過激化したものを与えれば、言葉は悪いですが、入れ食いだったわけです。

続々と創刊されたBL漫画雑誌の発行人(出版社の社長)は男性ですが、彼らは自社の商品が事実上の成人女性向けポルノグラフィであることを明確にわきまえていたことでしょう。

(だからこそ「BLはポルノだと思われたくない」という声もあるのです)

問題は次世代です。企業経営者・営業マンなどの男性にとって、それは自分が読みたいようなものではない。売れと言われれば売るけれども、どうにも理解しがたい。

これは次世代に対して売り込むべきものなのか? 本当に売れるのか? 少女は何を求めてるんだ? 従来型の商品(少女漫画)に対するシェアは?

漫画雑誌の編集方針。文庫の組み方。ゲームデザインの理念。さまざまな業界の男性が、評論家・社会学者である女性の言葉に耳を傾けたのでしょう。フェミニストはその波に乗ったのです。中島梓も乗ったと言っていいでしょう。

それは、1998年に解説書を出した榊原史保美にとって、切歯扼腕されるようなものだったに違いありません。1978年の専門誌創刊以来のベテラン創作家にとって、他人のプロパガンダに利用されるのは耐えがたい。自分には人格の根幹から湧き上がる創作意欲があった。そう思うのは創作家の誇りです。

ただし、すでに成人した読者に対して、もっと年上の成人女性(またはトランスゲイ)が何を書いて読ませようが、周囲にとっては好きにしろということでしかないのです。

すでに確立した(事実上の)成人女性向けBLという市場が、それなりにうまく回っているぶんには、別にかまわないのです。だから榊原の解説書は衝撃的な内容を持ちながらも影響力が弱かったのです。

(残念ながら、不適切な書名によって「プロも自虐していた」という誤解だけ流布しちゃいました)

他業界にとって重要だったのは、少子高齢化時代に4人の祖父母という強力なバックを持った未成年者たちに対して、なにを売り込むか? だったのです。

それは「お姫様が王子様を待ち続ける物語」であるべきなのか? それとも美しすぎる男たちの物語であるべきなのか?

事実として、この時代に「ビジュアル系バンド」というものも急成長したわけで、各業界としては「同性愛というわけにはいかないが、化粧した男のグループは少女に訴求する」と見切ったのでしょう。

そのことは、くり返しますが、彼ら1990年代・2000年代のビジネスマンたちが「すでに成立しているBL市場を、すでに成人した勤労女性が支えている」という本質を理解していたことを否定しません。

彼らは、少女(のスポンサー)と取引するにあたって、すでに成立している事実上の成人女性向け市場の盛況を参考にしたのです。

漫画・文庫よりも高額なビデオ・CD・ゲームソフトを購入する成人BLファンが存在するものならば、少女にそれ(に似たもの)を売り込むことは、長い目で見て投資する価値があるのです。

つまり、すでにその時点で「BLは少女のもの」だと思っていたのは、自分を「まだ少女」だと思っている人だけだったのです。

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