記事一覧

1955年5月、溝口健二『楊貴妃』大映

他人がお前を美しいという前に、自分が自分は美しいと思わなきゃ、女はダメだぞ。

製作:永田雅一、ランラン・ショウ 脚本:陶秦・川口松太郎・依田義賢・成澤昌茂 撮影:杉山公平 録音:橋本國雄 照明:久保田行一 美術監督:水谷浩 考証:盧世侯 衣装製作:上野芳生 小道具製作:高津利雄 音楽:早坂文雄 舞踊指導:三橋連子 メークアップ:牧野正雄 色彩技術:横田達之 助監督:増村保造

あら恋しの古やな。映画は大映。もう一回いいます。映画は大映。

ほんとうに大映はすごかった。水谷浩もすごかったが大映もすごかった。CGではありません。繰り返します。CGではありません。主権回復後3年。まだ「戦後」ですよ。

すべてのカットが油彩画のような濃密な色彩と構図の美しさに満ちております。これは映画の枠を越えて、日本美術史として考えても稀有の作品だろうと思われます。

わずか91分の清純ロマンスであって、戦乱スペクタクルではないので、男性向けとは言いがたいでしょうが、美術ファン・絵師の方は必見です。

撮影にはものすごい人数を使ってるのですが、メインキャラクターをギリギリまで絞り込んだので、ストーリーはシンプルで見やすいです。

玄宗皇帝は戦国武将ではなく、歴史上のヒーローとして観客が思い入れるポイントがないんですが、その男として何もできてない情けなさを森雅之の格調高い演技が救いました。

進藤・小沢の腹黒さがいいアクセントです。まさかの山村(安禄山)がたいへんカッコよく、本人も楽しそうに演じております。例によって山形勲が全篇を支える良心。

そしてグランプリ女優には赤がよく似合う。京マチ子は「登場した瞬間から誘惑的な美女(の妖怪)」という役が多かったので、今回は庶民出身の女の賢明さと悲しみを湛えた演技が印象的です。まさに梨花一枝、雨を帯びたるよそおい。

Related Entries

SEARCH

Profile & Caution

Misha

Author:Misha
スマホ時代にさからう評論系長文ブログ。冷静に通読できる大人の読者様を想定しています。

「若い人」に直接呼びかける文章は、18歳以上のヤングアダルト対象です。高校生は受験を最優先してください。

書く人は、新旧とりまぜて映画とアニメを見ながら文芸書に取りくんでみたり、昔の漫画を思い出したり、お国の先行きを心配したりしております。

記事中の色つき文字は、映画中の台詞・挿入歌からの引用です。あらすじは、あまり申しませんので、楽しみに御覧ください。取り上げる作品は、暴力・エロスなど特殊な要素を含んでいることもあります。

ときおり、耽美・BL・同人・LGBTに言及します。いずれの分野からも、偏見と差別と自虐がなくなるといいと思っております。

「二次創作の責任を二十四年組に押しつけるな」「実在同性愛者に甘えるな」が基調です。

全体として、二十四年組ファンが社会学者に物申すという珍しい構図。一部勘違い同人を叱責することによって全体を守るという意図もあり、ときにかなり辛口です。

記事は時々予告なく手直し・削除・分割しております。保存は個人的閲覧の範囲で、お早めに御随意に。転載・改変利用は固くお断り申し上げます。

解題


Casketとは、玉手箱。

でも検索すると棺桶がならびます。来世まで持っていきたい好きな作品の記録帳とご理解ください。