Misha's Casket

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1963年8月、田中徳三『座頭市兇状旅』大映

だから、どんなことがあっても自分の好きな人と添い遂げるんでござんすよ。

企画:久保寺生郎 原作:子母沢寛 潤色:犬塚稔 脚本:星川清司 撮影:牧浦地志 録音:長岡栄 照明:中岡源権 美術:太田誠一 音楽:伊福部昭 

強くなければ生きていけない。優しくなければ生きている資格がない。じゃっかんの不適切性によって今じゃ上映・放映しにくくなっちまいましたが、ジャパニーズ・ハードボイルドを描破する大映プログラムピクチャーはハイレベルでござんした。

洗練された明るいカラー撮影になりました。ズームアップで対象をとらえ続ける名人芸、お師匠ゆずりの地志カメラを堪能しましょう。(ちかしと読みます)

『悪名』から監督つながりで飛んでみましたが、このシリーズはお話が続いているようです。タイトルのわりに市さんの温かさが分かるお話。今日も廃屋セットは豪華です。(たぶんセット)

ゲスト女優は宿屋の娘さん役で、たいへん可愛いです。高田浩吉の娘さんでした。おお似てる。悪役は鉄板の安倍徹。用心棒役・北城寿太郎が色男です。役作りが東宝の某氏を想起させますのは言わない約束。

巻き戻し必須の剣戟シーンは構図もにくいです。自分の親分の命令でも、こんなのに掛かれって言われるのやだなァ……。

座頭の市さんは、日本映画界屈指の「ピン」芸人と申すべきか、匹敵するのは鞍馬天狗くらいか。時代劇・ギャング・任侠いずれを取ってみても、コミカルさを持ったヒーローって少ないわけで、この人の場合ヤクザといっても「盃をもらう」ということをしないので、親分子分兄弟分のしがらみがなく、しかも人間性がこなれている。

正義感ぶりを発揮する流れ者というキャラクターは股旅・仁侠映画には多いわけですが、この頼もしさと爽快さと愛嬌は「いっち」だと思います。(一升庵のおせんさんふうに)

女がまとわりつくのがめんどくさいと思いましたが、クライマックスへの布石になっていました。祭囃子が鳴り響く数日間の出来事で、中入りがなく序盤から終盤までテンポよく流れるお話と、映像的工夫の数々は、かえってこの大映が倒産するほどの映画不況の深刻さを思わせて、変な感慨も湧いて参ります。

思えば勝プロはその後で気を吐いたのでした。

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