2017/04/28

1965年6月、丸山誠治『太平洋奇跡の作戦 キスカ』東宝

勇気を持て。学者の良心を忘れたのか。

製作:田中友幸・田実泰良 脚本:須崎勝弥(千早正隆「太平洋海戦最大の奇跡」より) 撮影:西垣六郎 美術:北猛夫 録音:西川善男 照明:西川鶴三 音楽:団伊玖磨 監督助手:坂野義光 特技監督:円谷英二

資料:「霧の孤島」元第五警備隊軍医長・小林新一郎 「手記」元第一水雷戦隊先任参謀・有近六次 写真「記録写真太平洋戦史」光文社版

ガ島、テニアンすでに落ち、さらばラバウルよ。昭和18年7月29日。なお雪深き北太平洋アリューシャン列島キスカ。海霧よ今日もありがとう。

世界戦史上、最も地味にして最も大胆な(といってもよい)秘密作戦、完全再現。ほぼドキュメンタリー。カラーテレビ普及の世にあえて問うモノクロの美しさ。

カラーで撮っても地味な北方の風景を逆手に取ったと申せましょうか。ややコントラストを強めてあると思われ、たいへん美術的です。特技班も円熟の極致を見せます。爆薬使用量最高。

人物画は低く構えたカメラで密度を高めております。

オールスターの配役ぶりが見事で、筋立てとしては「来た見た乗った」という他ない単純なお話に、人物描写の深みを与えております。須崎脚本はやっぱり軍人どうしの会話が男らしく微笑ましく、清々しいのでした。

女性を一人も登場させず、兵同士の自然なジョーク以外のコメディリリーフもなく、本当に誠実に、現場の視点で作戦遂行の一部始終のみを再現したので、地味な展開でありながら、一瞬も観客を離さない緊迫感を実現しております。

DVD特典はスーパーバイザーをつとめた当事者のインタビュー。

「終戦という言葉は、腹には持ってないです。敗戦だと」(元キスカ島第五十一根拠地隊司令官付・近藤敏直)

キスカ島における空襲は本当に苛烈なものだったそうです。復員なさった方々は、若い人に二度と同じ思いをさせたくないと仰るものなのでした。

Related Entries