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1965年6月、丸山誠治『太平洋奇跡の作戦 キスカ』東宝

勇気を持て。学者の良心を忘れたのか。

製作:田中友幸・田実泰良 脚本:須崎勝弥(千早正隆「太平洋海戦最大の奇跡」より) 撮影:西垣六郎 美術:北猛夫 録音:西川善男 照明:西川鶴三 音楽:団伊玖磨 監督助手:坂野義光 特技監督:円谷英二

資料:「霧の孤島」元第五警備隊軍医長・小林新一郎 「手記」元第一水雷戦隊先任参謀・有近六次 写真「記録写真太平洋戦史」光文社版

ガ島、テニアンすでに落ち、さらばラバウルよ。昭和18年7月29日。なお雪深き北太平洋アリューシャン列島キスカ。海霧よ今日もありがとう。

世界戦史上、最も地味にして最も大胆な(といってもよい)秘密作戦、完全再現。ほぼドキュメンタリー。カラーテレビ普及の世にあえて問うモノクロの美しさ。

カラーで撮っても地味な北方の風景を逆手に取ったと申せましょうか。ややコントラストを強めてあると思われ、たいへん美術的です。特技班も円熟の極致を見せます。爆薬使用量最高。

人物画は低く構えたカメラで密度を高めております。

オールスターの配役ぶりが見事で、筋立てとしては「来た見た乗った」という他ない単純なお話に、人物描写の深みを与えております。須崎脚本はやっぱり軍人どうしの会話が男らしく微笑ましく、清々しいのでした。

女性を一人も登場させず、兵同士の自然なジョーク以外のコメディリリーフもなく、本当に誠実に、現場の視点で作戦遂行の一部始終のみを再現したので、地味な展開でありながら、一瞬も観客を離さない緊迫感を実現しております。

DVD特典はスーパーバイザーをつとめた当事者のインタビュー。

「終戦という言葉は、腹には持ってないです。敗戦だと」(元キスカ島第五十一根拠地隊司令官付・近藤敏直)

キスカ島における空襲は本当に苛烈なものだったそうです。復員なさった方々は、若い人に二度と同じ思いをさせたくないと仰るものなのでした。

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Misha

Author:Misha
スマホ時代にさからう評論系長文ブログ。冷静に通読できる大人の読者様を想定しています。

「若い人」に直接呼びかける文章は、18歳以上のヤングアダルト対象です。高校生は受験を最優先してください。

書く人は、新旧とりまぜて映画とアニメを見ながら文芸書に取りくんでみたり、昔の漫画を思い出したり、お国の先行きを心配したりしております。

記事中の色つき文字は、映画中の台詞・挿入歌からの引用です。あらすじは、あまり申しませんので、楽しみに御覧ください。取り上げる作品は、暴力・エロスなど特殊な要素を含んでいることもあります。

ときおり、耽美・BL・同人・LGBTに言及します。いずれの分野からも、偏見と差別と自虐がなくなるといいと思っております。

「二次創作の責任を二十四年組に押しつけるな」「実在同性愛者に甘えるな」が基調です。

全体として、二十四年組ファンが社会学者に物申すという珍しい構図。一部勘違い同人を叱責することによって全体を守るという意図もあり、ときにかなり辛口です。

記事は時々予告なく手直し・削除・分割しております。保存は個人的閲覧の範囲で、お早めに御随意に。転載・改変利用は固くお断り申し上げます。

解題


Casketとは、玉手箱。

でも検索すると棺桶がならびます。来世まで持っていきたい好きな作品の記録帳とご理解ください。