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1970年1月、岡本喜八『座頭市と用心棒』勝プロダクション

なるほど。二百両の値打ちはある。

製作:勝新太郎・西岡弘善 原作:子母沢寛 脚本:岡本喜八・吉田哲郎 撮影:宮川一夫 照明:中岡源権 美術:西岡善信 音楽:伊福部昭 助監督:中西忠三

吹きすさぶ風は黒澤へのオマージュ。映画十本分の面白さ。かっこいいとはこういうことさ。映像美と男の色気に酔っていい映画。岡本喜八ここにあり。バケモノとケダモノの明日はどっちだ。

いや、でもこれいいのかな!? 黒澤そこまで言ってないのに!? と叫びたくなる脚色具合がじつにこのなんというか岡本らしく喜八らしく、たいへん楽しい番外篇です。

タイトルの身もふたも無さから「パロディだよな」となめてかかっていた気持ちをいきなり場外へかっ飛ばすホームラン級のオープニング。スタッフ本物すぎ。宮川一夫の起用は洒落のつもりじゃないのかもしれませんが、やっぱり洒落が効いています。

なんともはや、プロットとしても演出としても黒澤に捧げたというか全力で喧嘩売ったというか、原作者初のカラー作品がよくも悪くもあれだったのと同じ年の公開時、ファンたちも苦笑する他なかったかもしれません。

公開当時は大映配給で、2003年に東宝がDVD化したようですが、予告篇も特典もなにもないシンプルな盤。大映も勝プロも倒れたので資料が残っていなかったところ、岡本&三船なので東宝がファンの声に応えて映像だけは拾い上げたといったところなのでしょう。

序盤は両キャラクターとも、ややコメディタッチに誇張しているようで、阿南さんを演じた時よりもアドミラル山本を演じた時よりも歳くってる三船さんは髪を黒く染めて、楽しそうに演じております。

相変わらず岡本流編集技が冴えており、監督自身が脚本を書いているので、台詞と画の連動具合がたいへん気持ちいいです。

三船の口説き文句は相変わらず最低で、女心を喜ばせてくれますが、市の純情ぶりもまた嬉しいところです。

黒澤は女性に皮肉な気持ちを持っているような描写が多かったですが、岡本さんのいいところは男女の情をナチュラルに織り込むこと。いっぽう、げっそり痩せた個性的な男のキャラクターもお好きですね。

2種類の原作を最大限に尊重しつつ、自分らしさも最大限に盛り込んだという、ひじょうに楽しいお仕事だったろうと思います。二次創作は、かくありたい。

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Misha

Author:Misha
スマホ時代にさからう評論系長文ブログ。冷静に通読できる大人の読者様を想定しています。

「若い人」に直接呼びかける文章は、18歳以上のヤングアダルト対象です。高校生は受験を最優先してください。

書く人は、新旧とりまぜて映画とアニメを見ながら文芸書に取りくんでみたり、昔の漫画を思い出したり、お国の先行きを心配したりしております。

記事中の色つき文字は、映画中の台詞・挿入歌からの引用です。あらすじは、あまり申しませんので、楽しみに御覧ください。取り上げる作品は、暴力・エロスなど特殊な要素を含んでいることもあります。

ときおり、耽美・BL・同人・LGBTに言及します。いずれの分野からも、偏見と差別と自虐がなくなるといいと思っております。

「二次創作の責任を二十四年組に押しつけるな」「実在同性愛者に甘えるな」が基調です。

全体として、二十四年組ファンが社会学者に物申すという珍しい構図。一部勘違い同人を叱責することによって全体を守るという意図もあり、ときにかなり辛口です。

記事は時々予告なく手直し・削除・分割しております。保存は個人的閲覧の範囲で、お早めに御随意に。転載・改変利用は固くお断り申し上げます。

解題


Casketとは、玉手箱。

でも検索すると棺桶がならびます。来世まで持っていきたい好きな作品の記録帳とご理解ください。