1974年10月、野村芳太郎『砂の器』松竹・橋本プロ

  01, 2017 11:02
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繰りかえし、繰りかえし。繰りかえし繰りかえし。

製作:橋本忍・佐藤正之・三嶋与四治 原作:松本清張(光文社・新潮社) 脚本:橋本忍・山田洋次 撮影:川又昂 美術:森田郷平 音楽:芥川也寸志 ピアノ:菅野光亮 指揮:熊谷弘 特別出演:東京交響楽団 録音:山本忠彦 照明:小林松太郎 監督助手:熊谷勲

寸毫の隙もなき圧巻の2時間23分。男性映画の金字塔。フルカラー&ワイドスコープの観やすさ、豪華出演陣とミステリー要素と音楽の抒情性による娯楽路線と、重い主題の自然主義路線の悲しくも芳醇な共存。

2005年のデジタルリマスター版のDVD化。5.1チャンネルドルビー・デジタル化によって再現された音声さんは、すごくいい仕事してます。音楽ばかりでなく、街の雑音が印象的です。

野村さん&橋本さんには『八つ墓村』で懲りたというのが本音だったんですけれども、これは映画史的に避けて通れないし……と覚悟を決めて鑑賞開始。しまったやられた。

日本縦断、大ロケーション。雄大なパノラマ撮影と手ブレ的クローズアップによって愚直なまでに積み重ねられる謎解きの緊張感。この、しつこく繰り返すことによって高めていくのが野村さんなんだなァと思ったことです。しかも意外なほど展開は早いです。さらに監督は、たぶん鉄道そのものが好きです。

丹波哲郎は上背があるので「ピン」が似合う人で、監督=脚本=観客の一人称男性視点を背負いきりました。森田健作の明るい笑顔が地味な画面の救いです。捜査本部の画の密度の濃さは『十二人の怒れる男』トリビュートかもしれません。

要所要所で信欣三、笠智衆がいぶし銀の輝きを放っております。そして加藤嘉は何の役なのかな、と待つことしばし。

ミステリー作品は犯人が分かってからが一つの見せ場なわけで、「後半は追いつ追われつのアクションもの」ということも多いですけれども、これは……。

原作未読ですけれども、松本清張は抒情的な作家ではないですから、原作では簡潔な言及だったところを映画的にふくらませたのでしょう。並行モンタージュとはこういうことさ。

主題の重さが、出演陣から粛然たる真情を引き出したには違いなく、このテンションの高さを横溝作品の娯楽性を基盤に「もう一回やる」ってのはやっぱり難しいだろうと思われます。……

重い主題の露出は、ステレオタイプを生んで偏見を強めることもあれば、社会を啓発し、教訓を与えることもある。劇中当時の国立療養所は決して良いところではなかったと思います。国家が控訴を断念したのは、二十七年の後でした。

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