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1975年8月、黒澤明『デルス・ウザーラ』モスフィルム

わが良き友よ。灰色の翼の鷲よ。

脚本:黒澤明、ユーリー・ナギービン 撮影:中井朝一、ユーリー・ガントマン、フョードル・ドブロヌラボフ 美術:ユーリー・ラクシャ 音楽:イサク・シュワルツ 

堂々141分。ゆっくり御覧なさいませ。アカデミー賞最優秀外国語映画賞、モスクワ国際映画祭金賞。

エイゼンシュテインとロシア文学に憧れ、セットのリアリズムにこだわり続けた人が1年かけて撮る大シベリアの風景は、畏敬の念と親愛の情に満ちて、いろんな意味で思えば遠くまで来たわけですが、これが撮れたから俺もう死んでもいいわ……みたいな、監督の深い呼吸が聞こえてくるようです。

構想30年。淡々としているようで急に山場があって、なだらかに落ちて行って、また次の山に差し掛かる、波形を描くような脚本は、人間存在の諸相を見せて、監督の呼吸とともに深いのでした。

1940年代以来さまざまな技巧を凝らした挙句に自分史上初のカラー作品があれだった人が、ここへ来て「あえて何もしない」という引き算の美学を選択したかと思わせておいて、ときどき独特の構図と色彩と編集のセンスを見せます。自然音に近いような何気ない音楽の使い方も素敵です。ワイドスコープをフル活用した家族の風景も胸に迫る画です。

中盤はあんまり何もしないとほのぼのし過ぎちゃうわけですが、冒頭に「何があったんだろう」と思わせているので、全篇をそこはかとない緊張感がつなぎ、一瞬一瞬が切ない心の宝物の輝きを帯びているのでした。

タイトルロールの使う杖がアイヌの猟師が使うのと同じ二股になっているのが印象的です。


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Misha

Author:Misha
スマホ時代にさからう評論系長文ブログ。冷静に通読できる大人の読者様を想定しています。

「若い人」に直接呼びかける文章は、18歳以上のヤングアダルト対象です。高校生は受験・就活を最優先してください。

書く人は、新旧とりまぜて映画とアニメを見ながら文芸書に取りくんでみたり、昔の漫画を思い出したり、お国の先行きを心配したりしております。

映画評は、アップロードする以上は「下げる」ようなことは言わないことにしております。あらすじもあまり申し上げませんので、楽しみに御覧になってください。記事冒頭の色つき文字は映画中の台詞・挿入歌の歌詞からの引用です。

なお、取り上げる作品は、暴力・エロスなど特殊な要素を含んでいることもあります。

ときおり、耽美・BL・同人・LGBTに言及します。いずれの分野からも、偏見と差別と自虐がなくなるといいと思っております。

「二次創作の責任を二十四年組に押しつけるな」「実在同性愛者に甘えるな」が基調です。

全体として、二十四年組ファンが社会学者に物申すという珍しい構図。一部勘違い同人を叱責することによって全体を守るという意図もあり、ときにかなり辛口です。

記事は時々予告なく手直し・分割・削除しております。保存は個人的閲覧の範囲で、お早めに御随意に。転載・改変利用は固くお断り申し上げます。

解題


Casketとは、玉手箱。

でも検索すると棺桶がならびます。来世まで持っていきたい好きな作品の記録帳とご理解ください。