Misha's Casket

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1981年8月、松林宗恵『連合艦隊』東宝

これが、私の最後の教訓です。

製作:田中友幸 脚本:須崎勝弥 企画協力:児島襄・豊田穣 撮影:加藤雄大 美術:阿久根巌 録音:矢野口文雄 照明:小島真二 音楽:谷村新司・服部克久 演奏:新日本フィルハーモニー交響楽団 監督助手:今村一平 製作協力:東宝映像株式会社 特技監督:中野昭慶 作画:塚田猛昭・石井義雄 ナレーション:平光淳之助

徳之島の西方、二十マイルの洋上。大和轟沈して巨体四烈。水深四百三十メートル。いまなお埋没する三千の骸。彼等終焉の胸中、果たして如何に。(吉田満)

聯合艦隊の最晩年。松林監督の最晩年。鶴田浩二の最晩年。いま、万感の思いを乗せて艦が行く。(あえて旧字体で)

予備学生だった監督も人の親になって、親父たちの大和。戦中の記憶がまだ新しかった頃の作品が日本海軍の青春のきらめきをそのまま写したものだったなら、これはちょうど反転させた形。子どもを死なせて、親だけ生き残っても……。

銃後の婦人たちとともに、特務士官、予備学生といった微妙な立場のキャラクターを配して、いままであまり描いて来なかった心情を重視するとともに、旧作の繰りかえしを注意深く避けるという、むずかしい舵取りを成し遂げました。

ただし前半は意図的に東宝戦記映画ダイジェストなので、温かい眼で懐かしく拝見しましょう。使いまわしじゃないです。遺産を継承したというのです。あの名場面をもう一度。最終的には良い映画なので頑張りましょう。

丹波演じる小沢さんの男気には泣いていいと思います。宇垣を演じるのがえらい美男で、あまり見かけない人なので誰かと思いましたが、高橋幸治ですね。NHK『太閤記』信長役で一世を風靡した人。

伊藤中将は高田稔などスラリとした美男が演じるのが定番で、今回は特別出演の鶴田が盤石の存在感を見せてくれます。顔立ちからもかなりの高齢であることが分かりますが、第一種軍装がよく似合います。

藤田進、平田浩明、佐藤允など、時々知った顔があるのも嬉しいです。中井貴一がひじょうに若いです。

山本五十六ではなく「連合艦隊」なので、レイテ以降に踏み込むわけで、心躍る愛国スペクタクル映画にはなりようもなく、よくも悪くも1980年代というべきか、じゃっかんの自虐性・批判意識を抑えようもなく、その沈鬱な雰囲気をそのまま再現したことが、むしろ映画人的良心であり、勇気だったと思います。

脚本は開戦前から敗戦後までのダイジェストなので台詞で説明してしまった部分が多く、手際はよくても今ひとつ冴えない上に、男同士の友情描写がやや芝居がかってしまい、これは須崎が歳を取ったのか、若い俳優の肩に力が入っているせいか。いや戦争を知らない子どもたちだからか。

それでもやっぱり時々名台詞が光ります。

たぶん、これだけ観ちゃうと話が端折りすぎで感情移入しにくそうです。これはやっぱり『ハワイ・マレー沖海戦』あたりから東宝戦記を長年かけて観てきた人が最後にたどり着く境地なのでしょう。

見どころはレイテの更に後で、何作戦かは申すまでもございませんが、20分の1スケール大和は速力6ノットで本当に航行いたします。火薬の質が変わったのかもしれませんが、なによりもフィルムの感度が上がったようで、悲しくも美しい画が続きます。白眉は2時間19分の辺りでしょうか。

かつてのような実物大空母というほどの大掛かりなことはできなくなっているわけで、クローズアップの多い画面はテレビドラマのようにも見えますけれども、艦内の丁寧な再現は今まであまりなかったことなので、映画苦境の時代にできる範囲で本当によく頑張ったと思います。

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