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1983年7月、蔵原惟繕『南極物語 ANTARCTICA』

そんな簡単なことが分かるまで、ずいぶん遠回りしてきました。

脚本:野上龍雄・佐治乾・石堂淑朗・蔵原惟繕 音楽:VANGELIS シンセサイザー協力:日本楽器製造株式会社 撮影:椎塚彰 録音:紅谷愃一 美術:徳田博 照明:川島晴雄 別班撮影:田中正博 現場録音:橋本泰夫 助監督:山下稔 ドッグトレーナー:宮忠臣

もはや戦後ではない1957(昭和32)年、オングル島、昭和基地。実話を足かけ4年で完全再現。撮影は、南極の厳しい自然との闘いでもあった……。

犬たちは本当にお利口さんでした。高倉健の男気も本物でした。日本映画史上、興行収入第一位。(2001年のDVD発売時点) 

文部省特選。蔵原さんらしい大上段ぶりから始まります。見るからに寒そうです。もはやドキュメンタリーです。疾走する犬を望遠で取り続けた撮影さんはほんとうにご苦労様でございました。

薄青の空。さえぎるもののない白夜。人跡未踏の大雪原には、人界の歴史と情緒のまつわりついていないシンセサイザー音が似合います。ペンギン同士のどつき合いやアザラシの昼寝が見られます。監督は骨折したそうです。

カナダの北端にオープンセットを建設するのは精鋭スタッフ総がかり。リアル南極ロケでは高倉さんも荷物運び。お犬様の面接は800頭。まだフィルムの時代。凍ってしまうので電気系統が使えないため、キャメラのズームは手動です。(!)

なお、蜃気楼もオーロラも、まさかの本物です。(!!)

最大限の尊敬をこめて「バカだ……」と言ってやりたい画と秘話が続きます。撮影に用いた艦は海上保安庁の協力による本物(第二宗谷)です。昭和30年代のシコルスキも本物です。模型特撮という発想は、これっぱかしもなかったみたいです。(東宝なのに)

俳優さんたちも対極地装備ですが、顔だけは出さざるを得ず、役者根性見せてくださいます。アフレコ技も駆使されているとは思いますが、現地はリアル強風が吹きすさんでいたようで、録音さんもご苦労様でござんした。

言葉数の少ない作品で、回想の手法を使わず、ほんとうにナチュラルに時系列通りに出演者(犬を含む)の顔で語りました。脚本は4人掛かりの挙句に省略の美学という、ある意味究極だと思います。

あまりのリアルっぷりに山村聡がどこにいるか分からんくらいですが、ちゃんといます。夏目雅子はいなくてもいいんじゃないかと思いましたが、やっぱりいい女でした。

渡瀬恒彦さんのご冥福をお祈りいたします。

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Misha

Author:Misha
スマホ時代にさからう評論系長文ブログ。冷静に通読できる大人の読者様を想定しています。

「若い人」に直接呼びかける文章は、18歳以上のヤングアダルト対象です。高校生は受験・就活を最優先してください。

書く人は、新旧とりまぜて映画とアニメを見ながら文芸書に取りくんでみたり、昔の漫画を思い出したり、お国の先行きを心配したりしております。

映画評は、アップロードする以上は「下げる」ようなことは言わないことにしております。あらすじもあまり申し上げませんので、楽しみに御覧になってください。記事冒頭の色つき文字は映画中の台詞・挿入歌の歌詞からの引用です。

なお、取り上げる作品は、暴力・エロスなど特殊な要素を含んでいることもあります。

ときおり、耽美・BL・同人・LGBTに言及します。いずれの分野からも、偏見と差別と自虐がなくなるといいと思っております。

「二次創作の責任を二十四年組に押しつけるな」「実在同性愛者に甘えるな」が基調です。

全体として、二十四年組ファンが社会学者に物申すという珍しい構図。一部勘違い同人を叱責することによって全体を守るという意図もあり、ときにかなり辛口です。

記事は時々予告なく手直し・分割・削除しております。保存は個人的閲覧の範囲で、お早めに御随意に。転載・改変利用は固くお断り申し上げます。

解題


Casketとは、玉手箱。

でも検索すると棺桶がならびます。来世まで持っていきたい好きな作品の記録帳とご理解ください。