1958年9月、小津安二郎『彼岸花』松竹大船

  08, 2017 11:01
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いいの。責任はあの子たちが持ちます。

原作:里見弴 脚本:野田高梧・小津安二郎 撮影:厚田雄春 美術:浜田辰雄 録音:妹尾芳三郎 音楽:斉藤高順 照明:青松明 色彩技術:老川元薫 監督助手:山本浩三

祝・総天然色撮影。昭和三十三年度藝術祭参加作品。初めて撮ったカラー画は、赤煉瓦の東京駅でした。小津さんらしくて泣けてきます。オープニングも本篇も、赤・白・黒の日本的トリコロール美学を追求したいもようです。あいに相生の松こそめでたかりけれ。

佐分利信のナチュラル演技の底力を目の当たりにいたしましょう。結婚披露宴スピーチの模範も示してくれます。笠智衆のよく回る喉も拝聴できます。大映専属山本富士子出演作品でもあって、衣笠作品からは想像もつかないほど元気で可愛いです。プレジデント読者が好む映画かもしれない……。

建造物自体がものを言うかのような独特の間合いと、遠近法を利かせた独特の構図と、会話をカット割りしてバストショットを編集するやや異様な話法は相変わらず。おだやかな見かけのわりに会話が鋭い(しょーもないとも言う)のも相変わらず。カラーの発色は、ちょっと珍しいくらい濃厚でつややかです。山下耕作が似た感じだったなと思い出してみたり。(※逆)

浪花千栄子も有馬ピリカ稲子も大活躍。映画全盛期の1950年代は女優がたいへん元気だった時代で、観客としての女性パワーも感じます。

物語は例によってと申しますか、女学校卒業後の若い成人女性の人生航路を主題に、新旧・男女の対決を描いて参ります。女が肌を合わせる相手を本人以外の個人が決めようとするのも不思議なことです。

小津さんは男性ですから、娘離れできない父親を主人公として描くわけですが、はっきりと諷刺もしておりますよね。だからこそ、しみじみと別れの情緒も生まれるのです。

台詞には戦時中の思い出や1958年当時の経済成長の様子が盛り込まれており、初のカラー作品が過去の集大成と時代の区切りという風格を帯びているように思われます。奇しくもこの年から映画界は斜陽に向かうのでした。


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