Misha's Casket

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1959年5月、小津安二郎『お早よう』松竹大船

困ったもんですねェ、テレビ。

脚本:野田高梧・小津安二郎 撮影:厚田雄春 美術:浜田辰雄 音楽:黛敏郎 録音:妹尾芳三郎 照明:青松明 色彩技術:老川元薫 監督助手:田代幸三 

もはや戦後ではない昭和34年。厚田が撮る浮き世の隅っこ暮らしは『生まれてはみたけれど』以来久しぶりの子ども映画。野田&小津は、敵に花を持たせる円熟の境地。小津作品の中でも若い人が観やすい一本ではないかと思います。当時の子どもに人気だった物事を細やかに取り入れております。

鮮やかなカラー撮影。臙脂の色合いがお好みのようです。会話のカット割りはなめらかに進行するようになったようです。劇伴が不思議なことが多い小津さんですが、この黛音楽による情景描写はオーソドックスです。

小津さんらしく女性諷刺映画でもあれば、男性喜劇でもあって、杉村春子は今日も大活躍。女の生活力は逞しく、数珠を提げて拍手うっちゃったりも致します。木下恵介『楢山節考』の公開は、この前年でしたね。

黒澤は『どん底』で「棟割長屋の内壁をとっぱらう」という大胆な舞台を造ってましたが、こちらは時代劇以来の長屋人情劇を(当時の憧れである)戸建で表すという離れ業のようです。『どですかでん』も思い出されますね。(※逆)

内風呂つきの中廊下型建売住宅と、コンクリートのアパート。フランスのプチ・ジビュスに匹敵する可愛いのが出てきます。買ってくれよう、テレビ。

戦争の記憶が薄れ、安心して歳を取ることができるようになればなったで新しい悩みが持ち上がるのもまた憂き世でございます。

監督は佐田啓二の個性の使いどころもよく心得ており、エンディングは「ブラボ」と拍手を送りたい大団円ぶりに満ちております。楽しく御覧ください。

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