1990年5月、黒澤明『夢』ワーナー・ブラザース

  09, 2017 11:04
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こんな夢を見た。

脚本:黒澤明 撮影: 特殊効果 技術協力:SONY

やると思えばどこまでやるさ。カメラかついで東へ西へ。いや、セットかな…?

美術さんと特殊効果さん大活躍で虚実不分明な幻想世界は、シビアなお話も含んでおりますが、映画を撮る喜びに溢れております。黒澤作品の楽しいところは、1940年代から変わってないところ。おなじモチーフ、おなじ表現を繰り返している。

単館上映系ならまだしも、これほどの大作を撮りながら、あまり興行性に譲歩しなくて済んだ人なわけで、不遇な時もあったんですが、いい人生だったなと。

東宝さんはさんざん冷や汗かかされたわけですが、やっぱり真面目にやって来てよかった。いつの日か、きっと誰かが分かってくれる。今回はスピルバーグが協力。ヴィジュアル・エフェクトを指揮したのはルーカス。出演はスコセッシ。話題としても豪華です。

さて、『乱』では「成功した男の自虐的ナルシシズムと女の復讐」という究極を描いてしまったので、あとはもう初心に還るしかない。夢を見ているのはアキラ・クロサワなのか劇中のアキラ・テラオなのか。お写真で拝見するかぎり、二人のアキラはよく似ているようでございます。

吹きすさぶ風は、今日も俺的世界の象徴。濃厚な作品を連発してきた人が晩年に達して、それまでの作風の結晶のような小品をサッと仕上げてファンをにやりとさせてくれるということは他でもありますが、その結晶がむき出しの社会批判であるところが黒澤流。

野口一等兵や鬼の造形(メイク)のやり過ぎ感もいつものあれで、もはや嬉しいです。『どですかでん』で見せた原色好きはこれだったのか…とか、『生きものの記録』を撮ったのもこの人だったなァとか、観客のほうもノスタルジー。

とくに序盤は、まだバブル時代だった日本と、海外が日本の芸術家に期待することのギャップが興味深いです。

なお、現代に市販されているお雛様の五人囃子は能楽を表しておりますが、古い時代のお雛様には(宮中の結婚式を表したお内裏様にふさわしく)雅楽の楽器を持たせたものもあるようです。

「妹の力」という言葉がありますが、劇中の少年より被布を着た少女のほうが少しお姉さんぽいところがいいですね。おとなの女性には、やっぱり「怖い」という印象があるようです。これで観ると、母が原型かな?

テラオが能楽でいう「ワキ」の役回りなのは明らかですが、笠智衆の「後ジテ」ぶりが見事ともなんとも、ほのぼのと言葉を失うばかりです。物語を語る順序が最後の仕掛け。

この黒澤と入れ違いに宮崎・高畠の時代が来たんだなァとか、全国的に「よさこい」が流行ったのはこの後だよなァとか、いろいろと連想されることです。

黒澤監督作品は本数が限られていることと、全てソフト化されているので、公開年順に御覧になるといいです。大きなシリーズになっていることがよく分かります。あと2本。

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