2017/05/18

BL論のきっかけは、学長就任です。

竹宮恵子の代表作を「少年愛は切ない」という言葉で紹介している新聞記事があったのです。漫画ファン向けミニコミ紙などではなく、一般向け。勇気ある選択だとは思いますが、咄嗟に「男同士は切ない」との混同を避けたいな、と思いました。

つまり、同性愛差別を助長し、彼らの将来の幸福を閉ざす原因になったり、言葉の暴力を含む暴力被害の原因になったりすることを避けたいなと思いました。

1970年代の二十四年組的美少年路線というのは「同性愛が描いてある」ことではなく「女が描いた」点が重要なのです。

もう一回言うと、もともと日本では「衆道の契り」の表現がタブーではなかったところ、そこに女流の筆が及んだのがポイントなのです。だから女権伸張の文脈で評価されることなのです。

新聞記事自体は「女流漫画家の長年の努力が認められて学長職に推薦され、本人もそれを名誉なこととして受けて立った」ということですから、「もう女の時代でしょ」という話として、それはそれでいいのです。

だからこそ、実在の性的少数者に失礼な質問をしたり、からかったりすることも「女の表現の自由だから大目に見てもらえるでしょ♪」という風潮が生まれてしまっている。正確に言うと、1980年代にそういう風潮が生じて以来、野放しにされている。

新左翼の影響を受けた1980年代フェミニズムは、自由と暴力を区別できなかったのです。それが尾を引いている。

【独身成人女性と未成年者の混同】

1960年代の森茉莉の時点では、本人が離婚後の中年女性だったことから、問題視されなかったのです。すでに1950年代の三島由紀夫作品において、有閑マダムが若い男との交流を求めて、ゲイボーイに小遣いを与えるという姿が描写されていますね。(劇中ではその振りをして息子の動向を探るんですけれども)

けれども、二十四年組は独身でした。二十代以上の成人でしたが、一回も嫁いだ経験のない独身でした。だから18歳以下の読者と混同されたのです。その上で評論家たちが戸惑ったのです。

「まず自分自身の『女の幸せ』を追求すべき若い独身女性が、オカマの話に夢中とは、どーゆーこっちゃ?」ってね。

ここへ当時のフェミニストが食いついて「だって女性は結婚すると人生が不利になっちゃうからですよ。育児を押しつけられるし、職場で出世できなくなるし!」と、論点をすり替えたのです。

それを男性陣も「なるほど~~」と受け入れてしまったので、未婚女性の「表現の自由」は最大限に配慮されるという先入観が生じてしまったのです。

けれども、もう一回言いますが、自由と暴力は、別です。

【同人の約束】

プロ創作家も、その人気にあやかったアマチュア(いわゆる同人)たちも、実在の人物をからかうことを目的としていません。

ことに同人の世界では、1980年代初頭以来「絶対に本物を怒らせるな」が合言葉です。

人権問題として告訴されれば、もともと著作権問題をかかえている二次創作者は、ついでに著作権問題も裁かれることはないまでも、裁判官に与える心象が悪く、勝ち目はありません。同人全体・BL全体の創作活動の差し止めに結果する可能性もあります。

「BLやめりゃいいじゃんw」と言うことも可能ですが、「じゃあロリもやめりゃいいじゃん」と言えてしまいます。少なくとも創作家・ファンだけでも、自分自身の性別自認・創作的嗜好にかかわらず、一致団結して「実在に迷惑かけるのは恥ずかしいやつであり、おなじ漫画ファンからも嫌われる」というイメージ戦略が必要です。

実際の同人誌即売会に出展する人々というのは、このくらいの約束は分かっている可能性が高いです。約2万サークルが(抽選によって)毎年いれかわるとはいえ、参加者にとっては「即売会にお客さんはいません」がモットーであり、行列の様子からいっても規律が守られていると見てよいでしょう。

(ここで面白半分に「守らない人もいます!w」とか言っちゃいけませんよ)

問題が起きやすいのは、やっぱりインターネット方面なわけで、とくにSNSにおいて、夜間の判断力が低下した時間帯に、すこしでも目立ちたいというタイプが無駄に騒ぐのです。無料通話アプリの時代になったからこそ、リアル人脈に乏しいタイプが「ゆるいつながり」のSNSをスタンドプレーの舞台にする傾向は、むしろ強まっているかもしれません。

背景にあるのは、いまの職場がつまらないという不満であり、劣等感です。

けれども、漫画を読んだからといって、BLを読んだからといって、実在の人々をイジメに行かなくていいのです。「こんなのイジメた内に入らないじゃん。ちょっと質問しただけじゃん」と、加害者から言ってしまってはいけないはずです。ことに、アラフォー以上になった人が、まだ「女の子だからw」では、困るのです。

「独身であるかぎり子どもと見なされる」というのでは、自分自身が結婚を人生の基準点にしている・結婚にこだわっているという証拠にしかなりません。

それに、いまや若い独身女性がほんとうにしっかりして、海外の恵まれない子どもたちのために学校を建てたとか、猛勉強して自衛隊の指揮官になったとか、既成概念にとらわれず、体に優しい野菜スイーツのお店を開いたとか、そういう時代になってしまったのです。

だから、もう、「あたしまだ若いからバカなんです♪」という顔はできないのです。それでは自分自身が若い人に先入観を持っている・差別しているという意味です。だから、ほんとうに若い人が冷たい眼で見るのです。気をつけましょう。

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