1959年、大島渚『愛と希望の町』松竹

  24, 2017 11:01
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わたしは、すこし悲しく、すこし怒っています。

製作:池田富雄 脚本:大島渚 撮影:楠田浩之 美術:宇野耕司 音楽:真鍋理一郎 照明:飯島博 監督助手:田村孟

祝・本格デビュー。大島渚という人は、題材が個性的なので映画会社の宣伝部とマスメディアによって煽られちゃうんですけれども、じつは常に心のあったかい、純真な正義感あふれる優しいおじさんだったと思うのです。

1950年代らしい文芸路線。都会の片隅の小さな小さな出来事を追った生活苦・社会諷刺物語ですが、撮影の楠田にとっても編集の杉原にとっても面白い仕事だったろうと思います。

途中まで「木下恵介作品」と言われても違和感ないくらいですが、だんだんヌーヴェルヴァーグ組の本領発揮という感じになって参るわけでございます。

映画というのは、小説や漫画以上に興行的な思惑が絡むはずですが、やっぱり第一作って創作家の素質が凝集しているもので、松竹のふところの大きさをも示しているのかもしれません。(タイトルの件ではちょっと揉めたもよう)

やや舌ったらずな素人っぽい女優は他の大島作品にも見られる要素ですが、やっぱり若い女性の良心への信頼感がありますね。たぶん監督自身の若さを示しているのでしょう。木下や黒澤がすれっからして見えるくらいです。

女性教員の台詞の大島調も不自然なほどではなく、処女作というよりは、むしろ抑制の効いた円熟味を感じさせると言ってもいいのかもしれません。

古い樽から新しい酒が出て来たら葡萄が育った土壌の良さがよく分かった、みたいな印象でしょうか。


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