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成田美名子『花よりも花の如く』に見る女心、男心。

シリーズ序盤のエピソードに基づく部分的考察。

じつは能楽師というのも舞台上の男である以上、女性客から「顔で選ぶ」とか「若さで選ぶ」とか(本人に聞こえないように)言われちゃう可能性はあるのです。

実際に『花花』に登場する若手能楽師たちは、女流漫画家自身の好みにしたがって、女性的(少女漫画的)な顔立ちの「イケメン」として描かれていますね。けれども劇中には、女性ファンがお舞台そっちのけでキャーキャー騒ぐ描写がない。これは読者が真似して実際の能楽堂で騒ぐのを防ぐためでもありますけれども。

だから主人公は、自分が女性から好奇の眼で見られる可能性に気づいていない。それどころか女性ジャズシンガーが「歌唱力よりもセクシーなドレスを着てくることを要求されるのが屈辱だ(あんたたち男はいいわね)」という発言に「いままで気づかなくて悪かった」というふうに胸を痛めてしまう。

「そんなの女だから当たり前だろ」とは言わない。「俺だって女どもの視線に耐えてるんだぜ」とも言わない。

女性向け雑誌上の連載ですから、女性フレンドリーな男性キャラクターなわけです。女心を分かってくれる。一緒になって傷ついてくれる。『恋重荷』で悩んだ時も、論点は女心を理解することでしたね。

おそらく男性の能楽ファンが読むと不思議な感じがすることでしょう。いかにも初心者らしい駄洒落(20kmの地謡)などは微笑ましく読み飛ばすとしても、根本のところで、これは能楽の話ではない。

演技を通じて「女心を理解できるようになったイケメン」という理想の男性像に対して、女性(作者・読者)が感情移入し返しているという構図。男性読者は、かやの外です。

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Misha

Author:Misha
スマホ時代にさからう評論系長文ブログ。冷静に通読できる大人の読者様を想定しています。

「若い人」に直接呼びかける文章は、18歳以上のヤングアダルト対象です。高校生は受験・就活を最優先してください。

書く人は、新旧とりまぜて映画とアニメを見ながら文芸書に取りくんでみたり、昔の漫画を思い出したり、お国の先行きを心配したりしております。

映画評は、アップロードする以上は「下げる」ようなことは言わないことにしております。あらすじもあまり申し上げませんので、楽しみに御覧になってください。記事冒頭の色つき文字は映画中の台詞・挿入歌の歌詞からの引用です。

なお、取り上げる作品は、暴力・エロスなど特殊な要素を含んでいることもあります。

ときおり、耽美・BL・同人・LGBTに言及します。いずれの分野からも、偏見と差別と自虐がなくなるといいと思っております。

「二次創作の責任を二十四年組に押しつけるな」「実在同性愛者に甘えるな」が基調です。

全体として、二十四年組ファンが社会学者に物申すという珍しい構図。一部勘違い同人を叱責することによって全体を守るという意図もあり、ときにかなり辛口です。

記事は時々予告なく手直し・分割・削除しております。保存は個人的閲覧の範囲で、お早めに御随意に。転載・改変利用は固くお断り申し上げます。

解題


Casketとは、玉手箱。

でも検索すると棺桶がならびます。来世まで持っていきたい好きな作品の記録帳とご理解ください。