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同人は、もともと一人でやって行くことを望んだ女性です。

女なれども大望ある身ゆえ、童子を名乗っておりまする。(田中徳三監督映画『大江山酒天童子』大映京都、1960)

ここは女性が太陽だった国ですが、中世に「武士の世」が成立すると、男性の補佐役として位置づけられてしまい、女性が自分で「旗揚げする」ということが少なくなったのです。

映画『もののけ姫』で再現されているように、絵巻物には女性の商店主の姿が描かれておりますが、武士の棟梁として、職人の棟梁として、女性が名前を掲げるということは殆んどないですね。直虎ちゃんも男の名前です。

だから、女性は伝統的に「男に付き合わされているうちに損させられた」という被害者意識があって、こうなったのはあんたのせいよという責任転嫁の発想が得意なのです。

男性も、社会の大黒柱は俺たちだという自負心があるだけに、それを認めてしまう。だから女性が男性から「そんなもん自分の責任だろ」と言い返されることに慣れていないのです。

だから言い訳は見苦しいというよりは「だって、だって」と言えば言うほど「そうよ、そうよ。男が悪いのよ。もっと言ってやりなさいよ。応援するわ」と同情してもらえる・味方が増える・自分が人気者になれる……と、勝手に期待しちゃうのです。

けれども、女性の同人というのは、明治時代の女流歌人から現代の漫画同人に至るまで、一人でやって行くことを望んだ女性たちです。一人ぼっちで精一杯努力する。挫折しても何度でも再挑戦するというのが本当です。それが一人でやって行くということです。

知ったかぶって「同人というのは個人的にイベント出展する人のことよ」なんて言うなら尚さらです。

【事件のせいではありません】

1988年から89年にかけて、1年間に渡って起きた連続誘拐殺人事件の犯人がアニメキャラクター商品を所有していたという理由で、すでにアニメファンが集まる場所として認識されていた「同人誌即売会」の参加者全体が危険視され、犯罪者予備軍として報道されたことは本当です。

が、そのせいでコミケが緊急閉鎖されたとか、規模を縮小し、逃げるように会場を移転したといったことはありません。それどころか規模を拡大し続けて、今に至るのです。

地方都市で開催されていた派生的なイベントが開催されなくなったのも事実ですが、これはバブル崩壊と同時期から顕著になった少子化と一極集中の結果です。

それまで都会で就職または内定していた1980年代の若者が、企業倒産によって地元へ帰ってしまうのと入れ違いに、地元経済に夢をつなぐことのできなくなった若者(1975年以降生まれ)が東京へ集まるようになったので、同人のお客様も世代交代したのです。

後者は、1980年代のアニメブームの中で育ったので、ほんとうにキャラクターのビジュアルと声優さんが好きです。ひと昔前の(キャラクターの名前だけ利用した)原作無視の小説というものが訴求力をなくしたのです。

今から数年前に、テレビ番組の権利者が(事実上の)許可を出したので、小説としての二次創作が小説投稿サイトやブログランキングを席巻してしまい、一般利用者から苦情が出て、二次創作投稿専用URLが設けられるなどの対策が取られたことがありましたね。それによって「二次創作」という分野そのものが一般にも認識されて、著作権議論も盛んになったのです。

というくらいで、今でも小説としての二次創作が存在するように、「薄い本」の形で二次創作小説を「頒布」していた時代もあったのです。

が、よくバブル時代の武勇伝として挙げられるフルカラー同人誌というのは、明らかに漫画ですね。1980年代後半に漫画同人が腕を挙げるとともに、美麗なカラーイラストを流行させたので、即売会における出展物としては、小説という形態はだんだん落ち目になったのです。

それでも書きたい・書けるという人はオリジナルBL作家としてプロデビューしました。これによって、老舗『JUNE』の(純文学調の)作風が古いと感じられるようになったのが、『JUNE』不振の真相です。

「帯がひどい」と物笑いの種になったような他社の読みきり文庫は、『JUNE』不振と入れ違いに急成長したのですから、文章を好む読者が一人もいなくなった(漫画が流行したから小説が売れなくなった)というわけではありません。

栗本薫(=中島梓)は『JUNE』投稿作品の審査員長として辣腕を奮っておりましたが、本人が早稲田で勉強し、ミステリーを書ける人だったので、二次創作同人系の軽快な(粗雑ともいう)作風を嫌っていました。

だからこそ、そういう作風の人々が他社を拠点にプロデビューし、新しい流行となったのです。

ほぼ同時にインターネットの利用も始まったので、サイトを開設して自費出版物を宣伝するということも始まったのです。

それらの波に乗り遅れた人は、たんに本人が手をこまねいていただけであって、他人のせいではありません。

1990年頃の時点で「栗本薫は昔より売れなくなったから可哀想」と言って笑っていた人は、自分の二次創作小説本も売れなくなりつつある(=早めにオリジナルに転向する必要がある)ことに気づくべきだったのです。

「飛行機を使って遠方の会場まで売りに行った」などのバブル期の武勇伝をリアル体験し、その崩壊も経験してしまった世代は、なんとなく「社会にだまされた」という意識を持ってしまっており、いまだに責任転嫁していることがあります。

もし、いい歳した同人活動経験者が、あまりみっともない言い訳を言うようだったら、無視していいです。可哀想がってやる必要は、ありません。

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Misha

Author:Misha
スマホ時代にさからう評論系長文ブログ。冷静に通読できる大人の読者様を想定しています。

「若い人」に直接呼びかける文章は、18歳以上のヤングアダルト対象です。高校生は受験・就活を最優先してください。

書く人は、新旧とりまぜて映画とアニメを見ながら文芸書に取りくんでみたり、昔の漫画を思い出したり、お国の先行きを心配したりしております。

映画評は、アップロードする以上は「下げる」ようなことは言わないことにしております。あらすじもあまり申し上げませんので、楽しみに御覧になってください。記事冒頭の色つき文字は映画中の台詞・挿入歌の歌詞からの引用です。

なお、取り上げる作品は、暴力・エロスなど特殊な要素を含んでいることもあります。

ときおり、耽美・BL・同人・LGBTに言及します。いずれの分野からも、偏見と差別と自虐がなくなるといいと思っております。

「二次創作の責任を二十四年組に押しつけるな」「実在同性愛者に甘えるな」が基調です。

全体として、二十四年組ファンが社会学者に物申すという珍しい構図。一部勘違い同人を叱責することによって全体を守るという意図もあり、ときにかなり辛口です。

記事は時々予告なく手直し・分割・削除しております。保存は個人的閲覧の範囲で、お早めに御随意に。転載・改変利用は固くお断り申し上げます。

解題


Casketとは、玉手箱。

でも検索すると棺桶がならびます。来世まで持っていきたい好きな作品の記録帳とご理解ください。