第四十七回「宿命の敗北」

  10, 2012 10:35
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周回遅れでお送りしております。


「私の挙兵の知らせは、平泉にいる我が弟、九郎義経の元にも届いた」

見りゃ分かるがな( ゚д゚)

見ても分かりにくい人のためには副音声というものがあるわけだし……。なんで“頼朝による昔ばなし”という無駄にややこしい構造にしたんだろう……?

第一部の頃から、戦の経過を説明するナレーションは明らかに無駄で、水をさすだけ邪魔だったし、「○○年に誰が即位した」というような話なら、盛国でもいいし時子でもよかった。徳子という手もあったはずだ。いずれにしても清盛の画像に「わたし」というナレがかぶるのは、ひどくややこしい気がする。

そして“東国にいる頼朝の目を通して京都(福原)を見はるかす”という距離感が、観客の臨場感を削ぐ。とともに、カメラは福原の合議の場にいる盛国の表情をとらえるので、視聴者は頼朝の目と同時に盛国の目を持たねばならず、要するに心理的に忙しい。

そしてどっちにしても、メロドラマ調の誇張した心理劇と、ミュージカル調の派手な演出と、大河伝統の「冷静なナレによって史実をかいつまんで解説する」という手法が、合ってないのであった( ゚д゚)

新しいことをやりたかったついでに、“ナレを使わない大河”に挑戦してみりゃよかったのに。

で、ナレの入らない俳優同士の掛け合い部分は、いい感じなわけである。ここまで来て中島演出? とオープニングで一瞬不安になったが、思いのほか良かった。平泉のロビンフッドごっこ(笑)も六波羅での軍議(?)も、BGMが無く、俳優の目と体の動きをとらえた画面で語ったのが気持ちよかった。撮影の清水昇一郎氏には他の回でも喜ばせてもらえた気がする。

もしかしたら脚本の質と、中島演出が、もっとも呼吸感が合っているのかもしれない。

もしかしたら、他の演出家は、くせのある脚本にじゃっかんの戸惑い・照れのようなものがあって、反動的に肩にちからが入り、異様なミュージカル、またはサイコホラーのようなものになってしまうのかもしれない。

ところで前回のラストで昔のようなまっすぐな目を取り戻し、みずから先陣に立つ覚悟を決めたかのようだった清盛、けっきょく何も変わってない頑固じじいのままなんだがもうどう解釈したらいいのか
( ゚д゚)

脚本に肩すかしを喰らうのは今にはじまったことじゃないが……

源氏を「烏合の衆」といいきる清盛は、いったい何万人を動員することができるつもりだったのか、どれほどの戦略をもち、高度な戦術を展開する訓練をつんできた自信があったというのか。彼は目はしのきく男だったのか、最初から最後まで、運がよかっただけの妄想にかられた中二病だったのか。

自分の手綱をとることもできなかったグダグダモラトリアム頼朝がなぜ突然お利口になったのか、まるで説明されてないのも今にはじまったことじゃない。

清盛が、信西を新しい国づくりに欠かせない人材だと認めていたくせに六波羅から人員をさいて三条殿を警護してやるわけでもなく、みすみす彼をしなせてしまった程度だったくせに、平治の乱の間に突然お利口になった経緯も、まるで説明されていなかった。うんまぁいつものことだ。

そして岡田くんはナレも下手だがセリフまわしも下手だ。うんまぁ(以下略)

糧食充分な源氏がたと、平家がたの不手際を対比させた手際は良かった。なんで平家はそんなに士気が低いのか、諸国における訓練や準備のようすを今まで描いてこなかったのが悔やまれるが、当時の「コメ」の色合いを見せた美術陣のちからの入りようは、よく伝わってきた。遊び女をひきいれた平家陣中の小汚さは、放映当初からいわれてきたこの作品の持ち味でもあり、いい仕事を見せてくれたと思う。

ここまで来て(たぶん)史実を無視したBL気味な妄想でしかない「男の友情」を強調したい脚本には物悲しさのあまり涙が出たが、もういいや。

ここまで来て侍大将のくちから歴史を復習させられるとも思っていなかったが、盛り上がり過ぎを抑えた中島演出と、男の色気をたたえた藤本隆宏と、酔うほどの思いきった手ぶれカメラを多用した清水撮影を得て、いい場面だった。

伊藤五も(ほんらい政治には関わらないであろう)侍大将の身分でそこまで分かってるんだったらもっと前に止めろ全力で止めろ命を賭してお諌め申せとも思うが今更しかたがない。キャラクターはすべて紙人形で、脚本家による歴史解釈を代弁するだけというドラマだ。

ともかく富士川の敗戦を軸に、その前後にあった源平双方の心理を描いたまとめぶりは上手かったと思う。“先の展開を見越して関連する要素を早めに描写しておく”ってことは一貫してできておらず、つねに後手後手なんだけど、回収していく手際は悪かない。

伊藤五こと藤本氏は、セリフを歌い上げるくせが少し取れたようだ。鬢が白くなったにふさわしい芝居になったような気がする。清盛も年をくってからの芝居がいいので、“役が役者をつくる”ってことはあるのかもしれない。

そしてこれだけ書かせてくれるんだから、密度が濃いには違いない……

そしてここまで来て周回遅れなのは、やっぱり切ないのでゆっくり進みたい感じなのですわ。
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