1957年12月、森一生『日露戦争勝利の秘史 敵中横断三百里』大映東京

  09, 2017 11:01
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危険を恐れぬ人間なんか、一人もおらんよ。

製作:永田雅一 企画:米田治 原作:山中峯太郎(小山書店版) 脚本:黒澤明・小國英雄 撮影:高橋通夫 録音:渡辺利一 照明:伊藤幸夫 美術:下河原友雄 音楽:鈴木静一

日本男児ここにあり。日の丸が嬉しくなる映画。大映スコープ、モノクロ、モノラル、1時間26分。鉄嶺、鉄嶺と人馬は進む。

映画がいちばん元気だった時代。どう見ても雪原にクレーン。北海道ロケ大敢行。動員人数四万五千。セットはロケと虚実不分明なリアリズム。声の響くスタジオ撮影は雪満載。本当にご苦労様でございました。場面転換は水彩画のようににじむフェードアウトが美しいです。

フィルムの一部が失われたようで現存するのは1時間23分。なお、撮影当時の同胞(日本国民)は約九千万人だったようです。

物語は明治三十八年。旅順開城約なりて、その後も楽ではなかったもよう。ヅラに難があるのは見ないふり。柳永二郎は重宝な役者。グーグルとか無かった時代は戦争もアナログだったのです。行きはよいよい帰りは怖い。ともに死ぬ気でこの馬と。

スパイアクションの一種ですが、まず日本人らしいと申しますか、お色気はもちろん笑いツボもほとんどなく、建川中隊長(または斥候長)の日記を拝見するような実直さ。菅原謙二は仁侠映画でも善玉役でしたが、まだ若いながらも知的で頼もしい隊長ぶりです。沼田くんは、かすか~~にコメディリリーフだと思うんですが、可愛い奴です。

黒澤らしさはどこにあるっていうと、全体を貫くヒューマニズムというと大雑把すぎるので……戦況の把握の忌憚なさと、わざわざ外国に押しかけて戦争やってるんだよという現地の人々との交流ぶりを良くも悪くも漏らさず描き出したあたりかと思われます。

日露戦争は勝ち戦だったので、太平洋戦争のように軍部の責任を問うという描写が少なく、上層部の描き方が美化ぎみなのは通例ですが、これはまた珍しいほど後味の良いものですから、日本人なら観ておくといい作品でしょう。(外国のお友達とはご一緒できないかもしれません)

同時公開は『赤胴鈴之助』だったそうです。流行していたものが分かるので併映情報も楽しいですね。

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