記事一覧

2000年1月、小泉堯史『雨あがる』

人間は、その、みんな、悲しいんですから。

製作:原正人・黒澤久雄 原作:山本周五郎(角川書店刊) 脚本:黒澤明 撮影:上田正治 撮影協力:斉藤孝雄 美術:村木与四郎 照明:佐野武治 録音:紅谷愃一 衣装:黒澤和子 音楽:佐藤勝 監督補:野上照代 題字:黒澤明

祝・黒澤組再結成。Dedicated to Akira Kurosawa。遺稿の完全映像化。製作委員会の時代になったようです。芸術文化振興基金助成事業。

最晩年を自覚した人が、この世への置きみやげにいちばん好きなもの、善いもの、美しいものを残そうとしたのです。諷刺精神も角が取れつつ、しっかりと芯のところで金剛石の輝きを放っているのでした。

黒澤って人は絵描きでもあったので、場面設定(美術)にものすごくこだわった人ですけれども、じつは「話法」としては中道を行った人だったと思います。小津があまりにも個性的で、木下が時々すごく変なことをしたのに較べて、映画として「見やすい」と思うのです。

すごーーく高い山岳を歩いてるんだけど、コースの取りかたは王道みたいな。

その黒澤らしさを、よく再現したな、と。

ブラームス1番を「ベートーヴェン10番」って言うことありますけれども。照明も撮影も作曲もヴェテランにお任せでいいですけれども、ロケハンのセンスとか、編集の具合とか。

ブルーグレーの色調補正や女性キャラクターの活躍ぶりに時代の変化を感じつつも、冒頭から『どん底』『乱』を始め、さまざまな先行作品を想起しつつ違和感なく見入ってしまい、ふと我に返ると、万感胸に迫るのです。

主人公は三船にはできなかった役だと思われ、寺尾の現代人的な線の細さが最大限に活かされております。(親父にそっくりと言いたい)

仲代達矢は特別出演的で貫禄を見せてくれます。太刀持ちの小姓が女優ではなく本当に男の子なのも重要。(重要なんですよ)

「雨あがる」ですから、最初は降ってるのです。このセットは……建てちゃったんですねぇ、やっぱり。河はナチュラルに増水待ち。大名庭園には小川を再現しました。(メイキング映像より)

最大限の尊敬を込めて、映画を撮る奴らってバカだなァ……。

神秘的な自然物は、制作年代を考えると「まだこれほどの景色が(大井川らへんには)残っていたか」と思わされます。望遠を効かせた構図も映画黄金期のようで、しみじみ嬉しいですね。

Related Entries

SEARCH

Profile & Caution

Misha

Author:Misha
スマホ時代にさからう評論系長文ブログ。冷静に通読できる大人の読者様を想定しています。

「若い人」に直接呼びかける文章は、18歳以上のヤングアダルト対象です。高校生は受験を最優先してください。

書く人は、新旧とりまぜて映画とアニメを見ながら文芸書に取りくんでみたり、昔の漫画を思い出したり、お国の先行きを心配したりしております。

記事中の色つき文字は、映画中の台詞・挿入歌からの引用です。あらすじは、あまり申しませんので、楽しみに御覧ください。取り上げる作品は、暴力・エロスなど特殊な要素を含んでいることもあります。

ときおり、耽美・BL・同人・LGBTに言及します。いずれの分野からも、偏見と差別と自虐がなくなるといいと思っております。

「二次創作の責任を二十四年組に押しつけるな」「実在同性愛者に甘えるな」が基調です。

全体として、二十四年組ファンが社会学者に物申すという珍しい構図。一部勘違い同人を叱責することによって全体を守るという意図もあり、ときにかなり辛口です。

記事は時々予告なく手直し・削除・分割しております。保存は個人的閲覧の範囲で、お早めに御随意に。転載・改変利用は固くお断り申し上げます。

解題


Casketとは、玉手箱。

でも検索すると棺桶がならびます。来世まで持っていきたい好きな作品の記録帳とご理解ください。