2000年1月、小泉堯史『雨あがる』

  16, 2017 11:01
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人間は、その、みんな、悲しいんですから。

製作:原正人・黒澤久雄 原作:山本周五郎(角川書店刊) 脚本:黒澤明 撮影:上田正治 撮影協力:斉藤孝雄 美術:村木与四郎 照明:佐野武治 録音:紅谷愃一 衣装:黒澤和子 音楽:佐藤勝 監督補:野上照代 題字:黒澤明

祝・黒澤組再結成。Dedicated to Akira Kurosawa。遺稿の完全映像化。製作委員会の時代になったようです。芸術文化振興基金助成事業。

最晩年を自覚した人が、この世への置きみやげにいちばん好きなもの、善いもの、美しいものを残そうとしたのです。諷刺精神も角が取れつつ、しっかりと芯のところで金剛石の輝きを放っているのでした。

黒澤って人は絵描きでもあったので、場面設定(美術)にものすごくこだわった人ですけれども、じつは「話法」としては中道を行った人だったと思います。小津があまりにも個性的で、木下が時々すごく変なことをしたのに較べて、映画として「見やすい」と思うのです。

すごーーく高い山岳を歩いてるんだけど、コースの取りかたは王道みたいな。

その黒澤らしさを、よく再現したな、と。

ブラームス1番を「ベートーヴェン10番」って言うことありますけれども。照明も撮影も作曲もヴェテランにお任せでいいですけれども、ロケハンのセンスとか、編集の具合とか。

ブルーグレーの色調補正や女性キャラクターの活躍ぶりに時代の変化を感じつつも、冒頭から『どん底』『乱』を始め、さまざまな先行作品を想起しつつ違和感なく見入ってしまい、ふと我に返ると、万感胸に迫るのです。

主人公は三船にはできなかった役だと思われ、寺尾の現代人的な線の細さが最大限に活かされております。(親父にそっくりと言いたい)

仲代達矢は特別出演的で貫禄を見せてくれます。太刀持ちの小姓が女優ではなく本当に男の子なのも重要。(重要なんですよ)

「雨あがる」ですから、最初は降ってるのです。このセットは……建てちゃったんですねぇ、やっぱり。河はナチュラルに増水待ち。大名庭園には小川を再現しました。(メイキング映像より)

最大限の尊敬を込めて、映画を撮る奴らってバカだなァ……。

神秘的な自然物は、制作年代を考えると「まだこれほどの景色が(大井川らへんには)残っていたか」と思わされます。望遠を効かせた構図も映画黄金期のようで、しみじみ嬉しいですね。

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