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2000年5月、市川崑『どら平太』

これまで来た町奉行とは、タマが違うようだ。

製作総指揮:中村雅哉 製作:西岡善信 原作:山本周五郎「町奉行日記」(新潮社刊) 脚本:黒澤明・木下恵介・市川崑・小林正樹 撮影:五十畑幸勇 美術:西岡善信 照明:下村一夫 録音:大谷巌 調音:大橋鉄矢 音楽:谷川賢作 協力:松竹京都映画撮影所 撮影協力:三井寺・御室仁和寺

遠からん者は音に聞け。近くば寄って目にも見よ。構想30年。四騎の会の面目。伝統的日本型ヒーローの再来。一本つけてくれと言いたくなる映画。

原作は『小説新潮』1959年6月号初出の短篇だそうです。監督は1915年生まれ。85歳の74作目。(!)

冒頭からアニメ畑出身らしさが地味に光ります。肉筆画コンテ可愛いざんす。(DVD特典メニューで拝見できます)

本篇は、各社の京都撮影所で鍛えたスタッフたちによる(まだCGに頼らない)情緒深い画作りと、コメディ要素とミステリー要素と「待ってました」の時代劇らしさが盛り合わされたところに唐辛子ではなく山椒のような諷刺の辛味が添えられて、ああ映画がいちばん輝いていた頃を知っている人々の魂が生きている。

もし1960年代初頭に映画化されていたらシリーズになっていただろうと思われます。花川戸の助六も、祇園の由良之助も、遊び上手は江戸庶民の憧れだったわけで、これこそ伝統的日本型ヒーローなのです。そして、これも三船にはできなかった役かもしれません。

また寺尾にもできないわけで、さらに石坂浩二にもできないわけで、いわんや佐田啓二にもできないわけで、役所の(寺尾たちよりは)骨太な男らしさがセクシーなので、遊んでる感じがするところがいいのです。

役所って人は大道具さんに混ざって働いたりしていたそうで(たぶん無名塾時代の話)、あるいはその間に人当たりの良さを身につけたのかもしれません。いや生来かな? 市川監督とはこれが初仕事だそうですが、変幻自在な魅力を見せてくれます。照明とカメラワークがたいへん印象的です。

セットは「いまの時代によく作ったなぁ」と思われるほどですが、美術さんがプロデューサーさんなら費用に糸目はつけないよね……と変な感心。

なお、片岡鶴太郎のうまさもよく分かります。浅野ゆう子の低い声がカッコいいです。以下、脇固めはたいへん豪華です。ばかに声のいい男がいるなと思ったら津嘉山正種でした。(顔もいいです)

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Misha

Author:Misha
スマホ時代にさからう評論系長文ブログ。冷静に通読できる大人の読者様を想定しています。

「若い人」に直接呼びかける文章は、18歳以上のヤングアダルト対象です。高校生は受験を最優先してください。

書く人は、新旧とりまぜて映画とアニメを見ながら文芸書に取りくんでみたり、昔の漫画を思い出したり、お国の先行きを心配したりしております。

記事中の色つき文字は、映画中の台詞・挿入歌からの引用です。あらすじは、あまり申しませんので、楽しみに御覧ください。取り上げる作品は、暴力・エロスなど特殊な要素を含んでいることもあります。

ときおり、耽美・BL・同人・LGBTに言及します。いずれの分野からも、偏見と差別と自虐がなくなるといいと思っております。

「二次創作の責任を二十四年組に押しつけるな」「実在同性愛者に甘えるな」が基調です。

全体として、二十四年組ファンが社会学者に物申すという珍しい構図。一部勘違い同人を叱責することによって全体を守るという意図もあり、ときにかなり辛口です。

記事は時々予告なく手直し・削除・分割しております。保存は個人的閲覧の範囲で、お早めに御随意に。転載・改変利用は固くお断り申し上げます。

解題


Casketとは、玉手箱。

でも検索すると棺桶がならびます。来世まで持っていきたい好きな作品の記録帳とご理解ください。