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それでは女性編集者が女性を傷つけたことになってしまいます。

2000年代に入ると「BLにエロは要らない」「BLはポルノだと思われたくない」「1980年代ふう過激路線にはついて行けない」という声が散見されるようになりました。

これは、1990年代に思春期を迎えた世代が二十代以上に達し、ひとかどの社会人として発言する自信をつけるとともに、ガラケーによってインターネット参加できるようになったので、発言の場が増えたことによります。

その波に乗って登場したのが『きのう何食べた?』(よしながふみ、講談社)と言っていいでしょう。したがいまして、同様に性的描写のないゲイカップルコメディの一般誌掲載が増えれば、喜ぶ読者が全国にいることが想定されます。

1970年代には、二十四年組などによる性的描写のない美少年漫画が、少女漫画と一緒に少女向け雑誌上で連載されていたものです。

「BLは女性向けポルノ」という偏見が確立したのは1990年代です。

バブル崩壊後の不況下に、少し前に犯人検挙された「M事件」を一つのきっかけとして、男性向けコミック有害指定運動が起きたので、男性向けポルノグラフィを売りにくくなった男性編集者が女性向けにシフトしたのです。レディコミもBLも彼らの息がかかってます。

このとき利用されたのが「女性向けは別」という弱者特権意識ですね。だからBLのポルノ化には、フェミニズムも一枚噛んだことになります。

で、男性編集者たちが男性向けポルノグラフィを宣伝するノウハウ(キャッチコピーの考案など)をBLに投入したので、BL文庫に掛けられる「帯」がひどいと言われる事態に立ち至ったのです。

また女流作家が「10ページに1回エロを書け」と命令されて泣かされるということも起きました。

もっと心理描写を重視した青春小説のようなものを書きたいのに「こんなんじゃ売れない。もっとエロを書け。俺が書き方を教えてやる」と叩かれる。本当に発行したいものを「ボツ」と言われる。

もういやだ、男性はBLを誤解している、BLはポルノだと思われたくない……という声がだんだん強まって来たのです。

したがいまして、もし現代の若い女性の皆さんが、男性の「BLは女性向けポルノだ。それを好む女は男の肉体に強い興味を持っているからナンパしやすい」という偏見に悩まされ、からかわれたり、しつこく付きまとわれたりするという被害を受けているなら、その原因を作ったのは、1990年代の男性編集者たちです。

はばかりながら、当方の主張は最初からこの通りです。が、途中で「女性の編集者もいるんだよ!」と、なんか怒ってる人が殴り込んで来たので、話がややこしくなったのです。

もし、女性の編集者が市販BLの過激化を推し進めたというなら、女性が男性編集者の真似をして女流作家を泣かせ、女性読者の被害を増やした元凶ということになります。

もし、そうではなく、女性編集者は女流作家の好きに書かせてやりたいと思っているが、男性編集長に叱られる。「生ぬるいことを言ってないで、もっとエロを書かせろ」と命令される。私もつらい……

ということであれば、もっと女性読者の中から「純愛路線希望」という声を挙げていって、女性パワーで男性の偏見を克服しましょうという話になります。

残念ながら、当方んところへ殴り込んできた中年女性は、自分自身が1980年代にひじょうに過激な二次創作BL作品を自費出版していたそうで、それがよく売れたことがご自慢のようです。自分の客はエロ目当ての人ばかりだったと証言したくてたまらないようです。

本人は「エロは要らない」という部分だけに反応して、表現規制派と闘ってるつもりなんですが、当方の論点は最初からそこじゃないです。

既定の路線であるエロス重視のBLに加えて、純愛BLの本数が増えれば、BL市場全体の規模が拡大し、出版界全体の活性化に寄与し、ひいては法人税納入によって天下国家のお役にも立つはずです。

多様性を尊重するとは、こういうことです。

「Aの味方するやつは、Bの敵だから、やっつけろ!」という二者択一の発想は、冷戦時代の遺物です。そういう時代は、1989年に終わりました。もう30年が経とうとしています。

なお「そんな税金いらない」という方々に対しては、煙草税はどうなんだというのは……言わずにおきましょう。

とまれ、他人の話をよく聞かずに、あわててクレームしてしまうと、真逆の意味になってしまいます。

すなわち「私の大学の先輩の女性編集者はすごいんだよ!」と自慢してやるつもりで「そいつが犯人だ!」という話になってしまいます。

他人の話はよく聞きましょう。また「なぜわざわざこんなことを言う人がいるのか?」と考えてみましょう。脊髄反射をふせぐコツは、まさに脊髄で反射しないこと。大脳を使うことです。

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Misha

Author:Misha
スマホ時代にさからう評論系長文ブログ。冷静に通読できる大人の読者様を想定しています。

「若い人」に直接呼びかける文章は、18歳以上のヤングアダルト対象です。高校生は受験を最優先してください。

書く人は、新旧とりまぜて映画とアニメを見ながら文芸書に取りくんでみたり、昔の漫画を思い出したり、お国の先行きを心配したりしております。

記事中の色つき文字は、映画中の台詞・挿入歌からの引用です。あらすじは、あまり申しませんので、楽しみに御覧ください。取り上げる作品は、暴力・エロスなど特殊な要素を含んでいることもあります。

ときおり、耽美・BL・同人・LGBTに言及します。いずれの分野からも、偏見と差別と自虐がなくなるといいと思っております。

「二次創作の責任を二十四年組に押しつけるな」「実在同性愛者に甘えるな」が基調です。

全体として、二十四年組ファンが社会学者に物申すという珍しい構図。一部同人を叱責することによって全体を守るという意図もあり、ときにかなり辛口です。

記事は時々予告なく手直し・削除・分割しております。保存は個人的閲覧の範囲で、お早めに御随意に。転載・改変利用は固くお断り申し上げます。

解題


Casketとは、玉手箱。

でも検索すると棺桶がならびます。来世まで持っていきたい好きな作品の記録帳とご理解ください。