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「少女漫画家になりたいから少女漫画家の権利は侵害しない」では、お話になりません。

なぜ、少女漫画ファンではなく、少年漫画ファンの女性だけが、二次創作BLファンと混同されるのですか?

1990年代前半まで、二十四年組などによる美少年漫画は、少女漫画と一緒に少女向け雑誌に掲載されていたのに?

いつの間に「女性キャラクターに感情移入できず、少女漫画を読めない女性だけがBLを読む」という偏見が確立されてしまったのですか?

1970年代に少女漫画と美少年漫画をおなじ雑誌上で続けて読んでいた人々は存在を否定されてしまうのですか? 誰にそんな人権侵害をする権利があるのですか?

「そんなおおげさなことじゃないじゃん」と言いますか? では、あなたが職場で「未婚者は可哀想」と言われたことも、たいしたことじゃないじゃんと言っていいですか?

誰が何に傷つくか、他人が決めてはいけないはずです。それが人権運動の基本のはずです。そんなことも分からずに「セクマイ」ごっこしているのは、誰ですか? (※叙述上の技法なので、真に受けて特定しなくていいです)

【底の浅い証言】

少女漫画読者が二次創作BLファンと混同されることはなく、少年漫画読者である女性だけが混同されるのは、少年漫画から(赤松健の言う)成人女性向けBL化が発生することが多いからですね。

では、なぜ少女漫画からはBL化が発生せず、少年漫画からは発生するのですか?

「本当は少女漫画家になりたかったからね」では、お話になりません。(分かってないのに口を出す人がいるんですよ)

少女漫画家になりたいなら、少女を主人公にした漫画を描く練習を重ねて出版社へ投稿すればいいだけです。他人が描いた少年漫画をBL化する必要はありません。

そんなことをしても少女漫画家にはなれません。もし「もう諦めた」と言うなら、少女漫画家の権利を侵害しても痛くもかゆくもないはずです。

そもそも「少年漫画家にはなりたくないから少年漫画家の権利なら侵害してもいい」というわけでもありません。

だいたい、少年漫画というのは少年が描かれているから少年漫画です。中学生が自分で描いたからではありません。手塚治虫以下、少年漫画の作者は成人男性です。

逆にいえば、和田慎二のようなオッサンが描いたものでも少女が主人公である以上、それは少女漫画と呼ばれるのです。

また逆にいえば、竹宮恵子や萩尾望都などの成人女性が描いたものも、少年が主人公である以上、それは少年漫画です。少年漫画を描いた人は少年漫画家です。女性であっても竹宮は少年漫画家です。

したがって「竹宮先生に憧れているから、少年漫画家にはなりたくないので、少年漫画家の権利なら侵害してもいい」ということにはなりません。まったく成り立ちません。

竹宮が描いた少年SF漫画は1970年代後半に少年向け雑誌上で連載され、1980年代初頭にアニメ映画化されました。1970年代以来、二次創作BL同人の大好きな「SFアニメ」です。

もし「作者の男女にかかわらず、少女漫画の男性キャラクターを用いたBL化は売り出されず、また作者が女流であれば、少年漫画であってもその登場キャラクターを用いたBL化は売り出されない」ということであれば、男性が描いた少年漫画だけが二次創作BL化の対象になるということになります。

それは、フェミニストの言う「男性中心社会に対する皮肉」ではないのですか? あるいは「男性の著作権者なら女性のすることを大目に見てくれる」という弱者特権意識が適用されているのではないのですか?

適用されているとしたら「同人はフェミとは別」とは言えないのではないのですか?

1980年代に「同人やっていた」人は、著作権問題で「男の人は女の子のすることを甘く見てくれる」と思って高をくくってしまったから、1990年代以降に新宿二丁目へ行くようになると「同性愛の男の人は女の子のすることを甘く見てくれる」と思って失礼なことを言ったり付きまとったりして彼らをきもち悪がらせているのではないのですか?

二次創作BL同人は、ほんとうに「同人はフェミとは別」だと思っているのですか?

二次創作BL同人は、著作権者や同性愛者から告訴された際にも、フェミニズムを利用して「女性向けは別」だの「弱者特権」だのと甘ったれた言い訳をしたりしないで、自分で全責任を取る覚悟ができているのですか?

【底の浅い証言その2】

「少女漫画からは二次創作が発生しないように編集者が目を光らせていたからね」

では、なぜ少年漫画からは二次創作が発生しないように編集者が目を光らせないのですか?

そもそも、二次創作というものが、素人どうしの交換日記(いまなら電子メールなど)の形で数人の愛好者に共有されているだけであれば、他人が目を光らせようもありません。

ということは、正確には「二次創作の発生」ではなく「二次創作の出展」すなわち事実上の大量販売に目を光らせていたということになります。なぜか?

単純に、少女漫画の作者自身が二次創作を嫌うから、その意向を受けて……ということもあり得ますが、編集者は漫画家の個人秘書ではないので、そこまでしてやる筋合いはないとも言えます。

けれども、実益が絡むとなれば話が違って来ます。すなわち、少女漫画の男性キャラクターを用いた二次創作BL同人誌が原作と競合する可能性。

ということは「少女漫画読者とBL読者の境界線は曖昧で、流動的である」ということになります。

また、目を光らせるといっても高校の風紀の先生による持ち物検査じゃないんですから、編集者みずから即売会へ乗り込んで「出してみなさい」ってことはない。実際問題として「通報を受け付ける」ということだったはずです。誰から?

一般書店にしか行ったことない人なわけはありません。即売会参加者です。

当然ながら、二次創作の「元ネタ」が何か分かって、その連載誌がどれであるかも知っている。そういう人が、ピンポイントでその編集部へ電話をかけるわけです。暴露話ではありません。論理的必然です。

つまり、少女漫画と美少年漫画が少女漫画誌上で混在していた時代を前提にしないと、この措置は発生しないのです。

「日頃は市販の少女漫画誌上で少女漫画と美少年漫画を両方読んでいるが、イベント開催日には二次創作BLを買いに行く」という混交的な読者行動を前提にしないと、この措置は意味がないのです。以上証明終わり。

つまり、日本では、意外なほど多くの女性が、少女漫画を読むついでに美少年漫画を読んでいた時代があるのです。1990年代前半までに成人した世代というのは第二次ベビーブーマーを含む多子世代。しかも、まだPCもスマホもテーマパークもなく、学童期を脱した女性向けの安価かつ安全な娯楽といえば読みものしかなかった時代。

だからこそ、彼女たちが主人公と同じ40代に達した現代になって『なに食べ』のヒットも起きれば、ほんとうに「漫画で読んだだけ」という中途半端な知識でゲイバーへ突入してしまう人もあるのです。

【少年漫画とは競合しない】

当然ながら、少年漫画には、本来の対象読者である学童を含めて「少年漫画だけ読む」という男性ファンがついているわけです。

彼らが女性同人ブースへ押しかけて、原作には見向きもしなくなるということはない。たま~~に「両方読む」という御仁がいるかもしれないけれども。

だから少年漫画関係者としては、まず余裕をもっていられるのです。そこへ「若い女流の成長を応援する」などといって、女性に迎合的という意味におけるフェミニストらしい理屈をつけることもできる。

当然ながら女性同人および二次ファンからは感謝されますわな。多くの男性漫画家がストレートだから、悪い気分ではない。「先に二次を読んで、後から原作の面白さに目覚めた」という人がいてくれれば一石二鳥というか思う壷というか。

だから、「ふつうに少年漫画が好き」という男性読者は、二次創作BL同人にとっても恩人です。彼らがいることによって二次が成り立つ。

したがいまして、彼らが「少年漫画に出て来る巨乳少女が好きだ」と言うなら、それは二次創作BL同人が文句言うことではないです。

いいですか? 1980年代の二次創作BL同人が「私は売れていた」と思って天狗になってしまい、他の時代のBLファンを否定したり、一般男性に喧嘩売ったり、ゲイに依存したりすることは、他の時代のBLファンにとっても、一般男性にとっても、ゲイにとっても、プロ創作家にとっても、少女漫画とBLが両方好きという潜在的なファンにとっても、心静かにインターネットで無料公開されている二次創作が読みたいだけというファンにとっても、迷惑なのです。

なんと申しますか、堅気に迷惑かけない仁義というのは、誰よりも自分自身を守るための約束なのです。

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Misha

Author:Misha
スマホ時代にさからう評論系長文ブログ。冷静に通読できる大人の読者様を想定しています。

「若い人」に直接呼びかける文章は、18歳以上のヤングアダルト対象です。高校生は受験を最優先してください。

書く人は、新旧とりまぜて映画とアニメを見ながら文芸書に取りくんでみたり、昔の漫画を思い出したり、お国の先行きを心配したりしております。

記事中の色つき文字は、映画中の台詞・挿入歌からの引用です。あらすじは、あまり申しませんので、楽しみに御覧ください。取り上げる作品は、暴力・エロスなど特殊な要素を含んでいることもあります。

ときおり、耽美・BL・同人・LGBTに言及します。いずれの分野からも、偏見と差別と自虐がなくなるといいと思っております。

「二次創作の責任を二十四年組に押しつけるな」「実在同性愛者に甘えるな」が基調です。

全体として、二十四年組ファンが社会学者に物申すという珍しい構図。一部勘違い同人を叱責することによって全体を守るという意図もあり、ときにかなり辛口です。

記事は時々予告なく手直し・削除・分割しております。保存は個人的閲覧の範囲で、お早めに御随意に。転載・改変利用は固くお断り申し上げます。

解題


Casketとは、玉手箱。

でも検索すると棺桶がならびます。来世まで持っていきたい好きな作品の記録帳とご理解ください。