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耽美の系譜。~1970年代

男性向けアクション映画に敵役として男の二人組が登場するんだけれども、片方の髪が長いなど女性的な要素を備えていたり、モーテルの同じ部屋から出てくるなんてことがあります。

「その道」の関係を暗示してるわけですが、映画を撮る人も観る人も、ほとんどがストレート男性だから、同性愛者というのは違和感がある存在です。敵か味方かといわれれば、敵に分類したい。

いっぽう、日本男性にとって金髪の外人は違和感がある存在です。

また女性一般が、男性にとって違和感のある存在ですね。それが「社会進出」するとなると、男性との間にポスト争いが発生する。女性を新卒採用するぶん、男性を減らすということになる。

だから日本男性は「ホモは出てけ。外人は入って来るな。女は引っ込んでろ。ここは俺たちの国だ」と言いたい。

だから、逆に日本女性は「同性愛の人と、金髪の外人さんと、女性で弱者の連帯しましょう」と単純に発想するのです。その象徴が、長髪の外人ロック・アーティスト。

その実際の当事者はグルーピー女子を引き連れたストレートである(ことが多い)けれども、彼をイメージモデルにしつつ同性愛者として設定し、女流が描いたというのが青池保子『エロイカより愛をこめて』ですね。竹宮恵子『風と木の詩』と同じ1976年の連載開始。

いずれも現代BL流行の原点といえる作品ですが、当時の社会状況に照らして、たいへん分かりやすい構造を持っているわけです。

作者たちは、この時点で二十代後半に達していました。同級生たちは第二次ベビーブームの(まさに)生みの親として、第一次反抗期を迎え始めた子どもたちに振り回されていたことでしょう。

確か「わたし作る人、ぼく食べる人」というテレビコマーシャルに婦人団体が苦情を申し入れたのもこの年です。

そういう世相にあって、独身を保ちながら、特殊な少年漫画を描く女流というのは、確かに女性の独立不羈・社会進出の象徴的存在だったのです。

そして彼女たちには、洋画や海外テレビドラマや東西の文芸から得た知識の蓄積と、ロックまたはクラシック音楽の素養がありました。個性的な創作物が、豊富な余暇時間に支えられているのは明白です。

では、1980年代初頭にコミケが分裂し、米沢班が晴海に居を構えてから急増した中学生同人たちには何があったか? 何もなかったのです。

洋画も海外ドラマも観たことがない。世紀の大泥棒が活躍する小説も読んだことがない。国際政治も軍事も知らない。クラシック音楽を(学校の授業以外では)聴いたことがない。1970年代のロック歌手も知らない。

けれども「男同士ってヤバイよね。エロいよね」という印象だけ持ってしまったのです。その時点で、すでに「アニメを題材にした二次創作」という技法が確立されていたから、それを通じて「男同士」というテーマを知ってしまった。

ので、二十四年組を読んでいないのです。

読んでいないので、よく知らないから「BLの話なのに、少女キャラクターの話なんかして、あんたなんにも知らないのね! 私が同人誌の話をしてあげるわ!」と叫びながら飛び出して来ちゃうのです。ご愁傷さまなのです。

【アニパロ小説マーケット】

コミックマーケットは、その名の通り、漫画同人会の集まりです。

『COM』なき後の漫画界をリードするつもりで全国の漫画同人会を集結させた漫画批評家集団。彼らにとって「いつの間にかアニメをネタにした小説のほうが流行していた」というのは許しがたい事態だった。当然です。

その時点で「アニパロ小説マーケット」を自分で立ち上げる人がいればよかったんだけれども、そうはならずに批評家集団のほうが分裂しちゃったのでした。

その後から参加した中学生は、中学生の分際で、自分もそれを書いて「薄い本」の形にすれば「晴海のコミケ」という最新流行イベントに参加する資格が得られると勘違いしてしまった。

すべての同人は平等であり、参加することに意義がありますから、参加するのはいいんですが、受け入れられるとはかぎりません。

けれども、当時は本人たちの人数が多かったから、そこだけで市場が成り立っちゃったのです。コミケ内部で分派が生じたのです。

ところで、なぜ小説なのか?

事実として「同人誌即売会」で小説が取引されていたから、栗本薫などの市販専門誌『JUNE』を拠点にした小説家たちと、「アニパロ」少女たちが混同されて論じられたのです。

栗本たちのほうでも、自分に責任があるような気分になっちゃって、いろいろと説明したのです。

でも漫画とアニメと小説のコングロマリットを分解すると、1960年代の森茉莉に端を発する耽美文学の系譜が見えてくるわけです。水面下にあって、薄らぼんやりしておりますけれどもね。

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Misha

Author:Misha
スマホ時代にさからう評論系長文ブログ。冷静に通読できる大人の読者様を想定しています。

「若い人」に直接呼びかける文章は、18歳以上のヤングアダルト対象です。高校生は受験を最優先してください。

書く人は、新旧とりまぜて映画とアニメを見ながら文芸書に取りくんでみたり、昔の漫画を思い出したり、お国の先行きを心配したりしております。

記事中の色つき文字は、映画中の台詞・挿入歌からの引用です。あらすじは、あまり申しませんので、楽しみに御覧ください。取り上げる作品は、暴力・エロスなど特殊な要素を含んでいることもあります。

ときおり、耽美・BL・同人・LGBTに言及します。いずれの分野からも、偏見と差別と自虐がなくなるといいと思っております。

「二次創作の責任を二十四年組に押しつけるな」「実在同性愛者に甘えるな」が基調です。

全体として、二十四年組ファンが社会学者に物申すという珍しい構図。一部同人を叱責することによって全体を守るという意図もあり、ときにかなり辛口です。

記事は時々予告なく手直し・削除・分割しております。保存は個人的閲覧の範囲で、お早めに御随意に。転載・改変利用は固くお断り申し上げます。

解題


Casketとは、玉手箱。

でも検索すると棺桶がならびます。来世まで持っていきたい好きな作品の記録帳とご理解ください。