1951年12月、木村恵吾『馬喰一代』大映東京

  26, 2017 11:02
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子どもというものは、どんな親でも、その親を手本にするものだ。

原作:中山正男(目黒書店版) 脚本:成沢昌茂・木村恵吾 撮影:峰重義 録音:西井憲一 照明:安藤眞之助 音楽:早坂文雄 美術:柴田篤二 

「ばくろういちだい」と読みます。馬喰(ばくろう)は伯楽の転訛ともいい、馬を育て、売買する人です。博労とも書きます。博徒とはちがいますが、丁半博打は打つみたいです。

基本的に『人生劇場』などと同じく父子の絆を描くホームドラマで、土間に座り込んだ飼い犬のようなカメラ使いが小津調ですが、全体の味わいはマキノさんに近いかもしれません。

序盤は選曲が無声時代みたいで、喜劇要素もあり、やや不安ですが、だんだん良くなります。時の流れを下駄で表現する心憎い演出がターニングポイント。クライマックスは……これもカットバックというべきか、面白い選択です。

黒澤さんとこで鍛えられた三船は『酔いどれ天使』の頃から眼ぢからがあって熱誠あふれる演技をする人でしたが、実年齢以上の父親らしい深みを表現できるようになっております。

前年の『羅生門』で大スターの仲間入りしたようで、この年には『白痴』を始め、仕事を選べと言ってやりたくなるほどのハードスケジュールで撮ってますが、手加減なしの体当たり熱演です。

三船って、じつはすごくたくさんの映画に出演してるので、もう自分の一生かけても全部は観られないだろうなと思うんですけれども、これは近所のホームセンターで売っていたので迷いなくゲットしました。男盛りの堂々たる肉体美も拝見できます。(めっけもん)

当然ながら白黒、標準サイズ。戦前の北海道の馬市と林業の様子が再現されており、貧乏長屋暮らしも細やかなリアリズムで、制作現場の誠実さを伝えるとともに、風俗記録的な意義もあるかと思われます。

ノースタントの格闘シーン(の一種)は映画観客が劇中観客と同じ時間の流れを体感する、ほぼ編集なしの長廻し。映画の中にレビューの舞台や拳闘など他の娯楽が取り込まれていた時代の手法であり、浅草などに男性向け興行が並んでいた戦前の空気をそのまま伝えているようでもあります。(※監督の経歴を後から拝見して納得しました)

京マチ子は、溝口映画などでは謎めいた美女の役が多い人ですが、ここではたいへん生き生きとしたお芝居を見せてくれます。

男性から見ると、確かに女性というのは着るものも男とはぜんぜん違うし、ときどき自分本位な理屈で急に怒り出すし、奇妙な存在ではあります。本音を言っちゃえばいいのに……とも思うんですけれども、どんなもんでしょう。

そして志村喬は、たいへん楽しそうです。なお、馬がたいへんいい演技します。カメラを傾けるの、流行ってましたか……?


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