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1955年9月、溝口健二『新平家物語』大映京都

お前がたは、望みにまかせてどんどん伸びてゆくがよい。

製作:永田雅一 原作:吉川英治(週刊朝日連載) 脚本:依田義賢・成澤昌茂・辻久一 撮影:宮川一夫 録音:大谷巌 照明:岡本健一 美術:水谷浩 衣装考証:上野芳生 色彩監修:和田三造 音楽監督:早坂文雄(東宝) 洋楽:佐藤勝

映画は大映。デジタル・リストアで蘇る、最晩年の溝口渾身の青年映画。1137年から始まる物語。昭和三十年度芸術祭参加作品。大映カラー総天然色映画が絶好調だった頃。大映ロゴの背景が美しいです。

盤石の豪華スタッフ、大量動員、クレーンロケ。標準サイズ画面の高さを活かしたというべき映画らしい画が続きます。庶民の表情・労働の様子をきちんと描くのが溝口流。京都の町方がべらんめぇになっちゃってるのは、ご愛嬌。

水谷美術は今日も見事すぎて、借景の山並みが合成なのかどうか虚実不分明。たぶん合成じゃないです。つまり野外セットを建てちゃってます。牛車の軋み音が、めっさリアルです。

お衣装も質感からいって麻でできているらしく思われます。現実世界が1955年ですから、まだ化繊全盛でもありませんし、ほんとうに忠実に再現したのでしょう。

雷蔵がまだ若いので野暮ったさを残しており、それが「ノーブルな顔立ちに院の血筋を暗示しつつも地下(ぢげ)侍」という役柄によく合っております。

その平太は例によって(?)親子関係問題でグレちゃうわけですが、その稚気あふれる悩みっぷりのうちにも雷蔵自身の性根の廉直さが感じられます。

院サイドと帝サイドの対立、間にはさまれた関白の苦衷も手際よく説明されております。僧兵描写に力点を置いたのも特徴で、動員数すごいです。

じっさい1950年代の社会でも、こんな人海戦術的デモがあった様子が記録フィルムなどから知られますね。(撮影現場的にはエキストラの出演料が安かったのだろうと思われます)

第一部ということで、物語の山場は、武士(なかんずく平氏)の台頭に対する院・帝・比叡山それぞれの立場の違いが集約した政治的問題と、平太自身の精神的葛藤が一つに重なって頂点に達する例の事件。脚本の流れと演出の盛り上げ方は、かくありたい。

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Misha

Author:Misha
スマホ時代にさからう評論系長文ブログ。冷静に通読できる大人の読者様を想定しています。

「若い人」に直接呼びかける文章は、18歳以上のヤングアダルト対象です。高校生は受験を最優先してください。

書く人は、新旧とりまぜて映画とアニメを見ながら文芸書に取りくんでみたり、昔の漫画を思い出したり、お国の先行きを心配したりしております。

記事中の色つき文字は、映画中の台詞・挿入歌からの引用です。あらすじは、あまり申しませんので、楽しみに御覧ください。取り上げる作品は、暴力・エロスなど特殊な要素を含んでいることもあります。

ときおり、耽美・BL・同人・LGBTに言及します。いずれの分野からも、偏見と差別と自虐がなくなるといいと思っております。

「二次創作の責任を二十四年組に押しつけるな」「実在同性愛者に甘えるな」が基調です。

全体として、二十四年組ファンが社会学者に物申すという珍しい構図。一部同人を叱責することによって全体を守るという意図もあり、ときにかなり辛口です。

記事は時々予告なく手直し・削除・分割しております。保存は個人的閲覧の範囲で、お早めに御随意に。転載・改変利用は固くお断り申し上げます。

解題


Casketとは、玉手箱。

でも検索すると棺桶がならびます。来世まで持っていきたい好きな作品の記録帳とご理解ください。