1955年9月、溝口健二『新平家物語』大映京都

  26, 2017 11:04
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お前がたは、望みにまかせてどんどん伸びてゆくがよい。

製作:永田雅一 原作:吉川英治(週刊朝日連載) 脚本:依田義賢・成澤昌茂・辻久一 撮影:宮川一夫 録音:大谷巌 照明:岡本健一 美術:水谷浩 衣装考証:上野芳生 色彩監修:和田三造 音楽監督:早坂文雄(東宝) 洋楽:佐藤勝

映画は大映。デジタル・リストアで蘇る、最晩年の溝口渾身の青年映画。1137年から始まる物語。昭和三十年度芸術祭参加作品。大映カラー総天然色映画が絶好調だった頃。大映ロゴの背景が美しいです。

盤石の豪華スタッフ、大量動員、クレーンロケ。標準サイズ画面の高さを活かしたというべき映画らしい画が続きます。庶民の表情・労働の様子をきちんと描くのが溝口流。京都の町方がべらんめぇになっちゃってるのは、ご愛嬌。

水谷美術は今日も見事すぎて、借景の山並みが合成なのかどうか虚実不分明。たぶん合成じゃないです。つまり野外セットを建てちゃってます。牛車の軋み音が、めっさリアルです。

お衣装も質感からいって麻でできているらしく思われます。現実世界が1955年ですから、まだ化繊全盛でもありませんし、ほんとうに忠実に再現したのでしょう。

雷蔵がまだ若いので野暮ったさを残しており、それが「ノーブルな顔立ちに院の血筋を暗示しつつも地下(ぢげ)侍」という役柄によく合っております。

その平太は例によって(?)親子関係問題でグレちゃうわけですが、その稚気あふれる悩みっぷりのうちにも雷蔵自身の性根の廉直さが感じられます。

院サイドと帝サイドの対立、間にはさまれた関白の苦衷も手際よく説明されております。僧兵描写に力点を置いたのも特徴で、動員数すごいです。

じっさい1950年代の社会でも、こんな人海戦術的デモがあった様子が記録フィルムなどから知られますね。(撮影現場的にはエキストラの出演料が安かったのだろうと思われます)

第一部ということで、物語の山場は、武士(なかんずく平氏)の台頭に対する院・帝・比叡山それぞれの立場の違いが集約した政治的問題と、平太自身の精神的葛藤が一つに重なって頂点に達する例の事件。脚本の流れと演出の盛り上げ方は、かくありたい。

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