1961年7月、本多猪四郎『モスラ』東宝

  26, 2017 11:05
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平和こそが、永遠に続く繁栄への道である。

製作:田中友幸 原作:中村真一郎・福永武彦・堀田善衛(「週刊朝日」所載) 脚本:関沢新一 撮影:小泉一 美術:北猛夫・安倍輝明 録音:藤繩正一・宮崎正信 照明:高島利雄 音楽:古関裕而 挿入歌『インファントの娘』唄:ザ・ピーナッツ 振付:県洋二 特技監督:円谷英二

東宝スコープ。総天然色。驚愕のリアリズム。本多と円谷の真っ正直さに感涙がにじみます。むしろ模型だからすごい。原作者名に目を疑いつつ。

今でも人形を少しずつ動かして撮影するストップモーション・アニメというのがありますけれども、あれ好きな人は必ず見ましょう。本当に風を起こして車輌や船舶の模型を吹っ飛ばしてます……。ジオラマ空撮は、巨大セットの上にゴンドラを吊るしてキャメラを乗っけるのです。

小美人出演シーンを成り立たせる合成は、もう絶対にアナログの職人仕事なんですが、いま見ても違和感がないほど美しいです。マット画との合成も見事です。

いっぽう実写美術の北さんの仕事ぶりも半端なく、これを支えた田中友幸もすごかったが日本経済全体の上り坂ぶりもすごかった。圧倒的というべき密林セットからしても、この一本が宮崎駿に与えた影響の大きさも計り知れないと思われます。

しかも、それらをザクザク切って行く本多さん。渡航自由化前の観客を憧れのハワイ航路へ誘う序盤からして贅沢な写実主義ですが、展開はものすごく早いです。

人間ドラマの対立の構図は、大国の権威と火器の威力を嵩に着て、自然を征服し、利用しようとする外人キャラに対して、日本男児の良心。新安保時代の国民感情を鮮やかに反映しております。ロリシカって国名は微妙だなと思いつつ。

いっぽうで群舞を活かしたミュージカル調はハリウッド映画への憧れを表しているに違いなく、同時に日本のお家芸ともいえる少女歌劇を連想するところでもあります。

いろいろ盛りだくさんですが、じつは小美人をめぐるお話であって、リアルに若い彼女たち(1941年4月生まれ、20歳)の歌唱力こそ神秘の奇跡。何度もお色直しするのが目に楽しいです。

いまのアイドルに較べれば垢抜けない顔立ちでしょうが、その哀愁を帯びた純真さが、かえって未開の孤島の妖精にふさわしく、たいへんいじらしいですね。ハーモニーが美しい挿入歌は見事に脳内リピートします。

しかも怪獣が芋虫。女性向け企画なのに芋虫。いや可愛いですけれども。

外殻のない幼虫にしちゃ打たれ強いなとか、そもそも小美人ってなんなんだよとか、モスラとの関係とか、説明されていない部分がいっぱいありますけれども、そこは飲み込んでくれ!(女性はそこまで気にしないからいいんだってことなのかもしれません)

なお、志村喬と河津清三郎が渋い花を添えております。

これで映画産業自体は斜陽してるってんだから、むしろ1960年代に入ってから日本映画界は底力を発揮し始めたというべきなのかもしれません。

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