1963年1月、市川崑『雪之丞変化』大映京都

  10, 2017 11:05
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あの顔で、あの度胸で、奇妙な男。

製作:永田雅一 原作:三上於菟吉 脚色:伊藤大輔・衣笠貞之助 シナリオ:和田夏十 撮影:小林節雄 録音:大谷巌 照明:岡本健一 美術:西岡善信 音楽:芥川也寸志 振付:徳間勘五郎 声:徳川夢声

東京オリンピック開催の前年、好景気の日本のお正月を飾る長谷川一夫三百本記念映画。(!)

紫烏帽子に乱れ髪。目千両の浮世絵がほしいです。

基本的に一夫の女形芸を堪能する映画であって、お衣装がすごく豪華です。雪さまはオフ舞台でも女性として振舞っているので、婦人との逢引は悩ましい画になってしまいます。誰得?

といいつつ、じつは主演以外の男優・女優とも長い台詞をサラサラッと言ってのける実力派ぞろいで、舞台劇を意識した個性的な演出と、大映スコープの間口を活かした斬新な構図が続き、映画としてたいへん見応えの高い作品です。

この監督にとっては初の時代劇で、そこへアニメ出身らしいカット割りを適用し、芥川ジャズを響かせちゃうという洒落っけの鋭さもよく分かります。

物語そのものは、後の横溝シリーズに通じるような陰惨なもので、なるほど市川さんのドライさがないと難しかったかもしれないなどとも思われます。

主演の役柄を考えると、まだ二十代の青年のはずですが、大正明治生まれの主演の三百本記念ですから、若くないのは明らかです。ただし、この役は若造にはつとまりません。女形の剣豪というのは、もう絶対に日本でしか撮れませんので、ひとつの国民的財産と思って拝見いたしましょう。

逆にいうと、最近の映画では俳優がサバ読んで出演するということがなくなったので、その点では表現の幅がせまくなったのです。

そもそも女役を男が演じていたのが実際の女優の時代になったのですから、だんだんリアリズムになったわけで、まさに女形の話であることを思うと、面白い符牒ではあります。

その女装の麗人に対して、山本富士子がべらんめぇで、やんちゃな男の子みたいで楽しいです。

市川監督は、雷蔵を使って『炎上』や『破戒』を撮った人ですが、ここでは明るいコメディリリーフとして登場させております。新太郎は不知火検校と座頭市を成功させたことによって演技の型を確立していたようで、その個性をやや露呈しすぎそうなところ、ギリギリでキャメラを引きました。

それにつけても、日本家屋のつつぬけっぷり。

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