寄る年波を感じたので、負け犬よりマシって言いたかった人の件。

  12, 2017 11:04
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2006年に「腐女子」の思想を解説すると称する書籍が発行されたことがあって、内容が浅はかだったので強い批判を浴びたんですけれども、あれ書いた人は要するに「負け犬よりマシ」のひとことを言いたかったんですね。

それまで自由に生きて来たつもりだった(二次創作)BLファンが、急に寄る年波を感じたので、自己弁護したくなったのです。

「私はBLが好きですが、差別しないでください」というなら被害者の主張です。人間は平等ですという言い方をしているかぎり、他の人権運動とも平等です。

けれども「あの人たちよりマシです」と言った瞬間に自分が他人を差別したことになります。自分が加害者です。

他人が自分を差別することは許さないが、自分は他人を差別してもよい。

こういうのは、もともと「少女漫画しか読めない女は遅れてる。レディコミしか読めない女は分かってない。結婚するやつは男に負けた。BLに目覚めた私がいちばんイケてる」と思っていた人です。

もともと他人を差別していた人です。

なお、差別とは、本来はたんに区別することという意味ですが、第二義として「特に現代において、あるものを、正当な理由なしに、他よりも低く扱うこと」です。(参考:1988年、小学館『国語大辞典(新装版)』)

【何か言わなければならない】

1980年代前半に「アニパロ」を購読したという人ですから、2006年には30代後半以上です。もう産めないと見切る頃です。

(正確にいうと、医学の力を借りて産むことはできるんですが、退院後に徹夜続きの育児で体力負けするのです)

だから「私はこの歳になるまで結婚していません。少子化に拍車をかけてごめんなさい」と言わなければならないと感じてしまったのです。

それをそのまま言う代わりに「でも、あの人たちよりマシです!」という自己正当化を図ったわけですね。

だから本当の問題は、その「何か言わなければならない」という気持ちそのものです。

だから「負け犬というのは便宜的な自称であって、ほんとうに負けたと思っているわけではない」かどうかが問題なのではないです。そこが論点じゃないです。

先手を取って自虐するのも、自己正当化のために攻撃的になるのも、根っこは同じで、どちらも「何か言わなければならない」と思ってしまうことが本当の問題なのです。

【老後の不安】

ライター(記者)であれば、たんなる取材の結果として書くことが可能ですから「私も腐女子です」と名乗らなくてもいいのです。

名乗った上で「私たちは負け犬よりマシです」と主張するということは、じつはその人自身が結婚していないことの言い訳をしたかったわけです。

つまり結婚していないことを非難されると思ってしまった。自分自身が老後に不安を感じてしまった。

だから「BLに夢中にならず、結婚しておけばよかった」と思ってしまったのです。

そうでないなら「負け犬よりマシ」という言葉は出てこないのです。

1990年代なら、確かに「M事件」に関連して同人誌即売会が悪目立ちしていたので、関係あるかのように思われた『JUNE』派の作家たちが自己弁護を試みたのも当然なのです。

けれども、2006年の時点で「負け犬よりマシ」と言わなければならなかった社会的背景って、とくにないはずです。

SNSが広まり始めていたので「腐女子ってやつらはなんなの?」という疑問の声が挙がり始めていたでしょうから、話題にすること自体はタイムリーですが、負け犬クラスタと自分を較べて優劣判定する必要はないはずです。

自慢したがる人には劣等感があります。書いた人が個人的に劣等感を感じていたのです。……同窓会でもあったのかもしれません。

【結婚とは別】

ここで間違えやすいのは、二次創作BL同人が使う「やおい」「腐女子」という自虐語は、もともと「二次」を意味する隠語であって、結婚していないこととは関係ないことなのです。

1970年代に同人誌即売会の中で「山も落ちもない」と言い出した人々は、おなじ同人誌即売会の参加者に対して、結婚していないことについて言い訳する必要はなかったのです。みんなサブカルを共有している若者たちなんですから。

女性が自虐する気持ちを、結婚したくない気持ちにこじつけて説明することを繰り返したのはフェミニストです。

で、いかに「やおい少女」が異性関係の劣等感に悩まされているかが強調されたので、対抗手段として「モテない女ではなく、もともとトランスゲイである」と言い出した人があって、この誤解が広まりそうになったので、入れ違いに使われるようになったのが「腐女子」です。

くさっても女子であって、男性(トランスFtoM)ではないって意味ですが、元をただすと、あくまで「二次」の言い換えであって、結婚とは関係ないのです。

なにも「負け犬クラスタよりも一歩早く、結婚しないことを非難されないように自虐した」ということではないのです。もっと実際的な危険性があったのです。すなわち告訴・起訴。著作権法による。

【心は男の弊害】

結婚を忌避することは、二次創作を好むかどうかに関わらず、戦後の男女には一般的な傾向でしかありません。

男子なら早くお嫁さんもらいたがるというわけでもないのです。婿入りすれば自分で家を建てなくてもいいからラッキーじゃんといって婿入り先を探し回るというわけでもないのです。

「親がほんとうに老化したらどうしよう」と思いつつ、まだ大丈夫と自分に言い聞かせ、なんの対策も採らないまま数十年を過ごすというのが、一般的なのです。

ロリショタに夢中な人も、鉄道に夢中な人も、旧軍に詳しい人も、スポーツを続ける人も、その点じゃ同じです。自分ではすごいことをしているつもり。

そして女性だけが責められるわけでもないのです。男がしっかりしないからとか、情けないとか、孫の顔が見たいとか、何度も言われるのです。しまいに、おなじ男によって「どうせナントカじゃ仕方ねぇなw」とか「ナルシスト」とか「キモい」とか、笑いものにされるのです。

それに対して、男性はあんまり言い訳しないのです。黙々とおのれの道を行くのです。ただし時々じぶんより弱いものに具体的な暴力をふるう者が出ちゃいます。

それはやっぱり、おなじモテない男クラスタから見ても、弱い人なのです。

女性は口先でなんとかしようとするのです。その際、自虐するだけで済ませたのが負け犬で、二次創作派も(「じつは著作権問題です!」と自分から言っちまうよりは)モテない女ってことでいいですって話にしておいたのが、他人を虐待することによって自己正当化しようとするタイプが出てきたってことが真の「負け犬よりマシ」発言の要点です。

「心は男」などといって、過激な創作物を共有し、子どもや同僚に手を出す悪い男になった気分を面白がってきた結果です。

人のふり見て我がふり直せ。昔の人はいいことを言いました。二次創作BLくらい好きでもいいですから、自分もやっちまわないように気をつけましょう。

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