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1983年6月、舛田利雄『日本海大海戦 海ゆかば』東映東京

大日本帝国海軍、万歳。

脚本:笠原和夫 撮影:飯村雅彦 特技監督:中野昭慶 美術:北川弘 録音:宗方弘好 照明:小林芳雄 助監督:蔦林淳望 編集:西東清明 音響効果:原尚 音楽:伊部晴美 トランペット独奏:羽鳥幸次

1983年の時点で東映が三船敏郎を使って対馬沖海戦を撮る意味について小一時間……『二百三高地』の続篇ですが、さすが東映(と笠原さんと舛田さん)は男心をよく知っておりました。中野を迎えた特技・飯村撮影による炎の色と、船体の汚しっぷりと、東郷ターンの大回頭ぶりを堪能しましょう。

マット画も合成もきれいです。実物大の煙突および砲身からは見事に黒煙が上がっております。撮影秘話が気になるところです。

徹底的に三笠一艦に描写を絞り込むことによって密度を高めるとともに、ありていにいって予算を効率よく使っていると思われますが、とくに終盤の緻密かつ圧倒的な再現は艦内をよく知っていると言わねばなりません。学術的な研究が進んだということもあるのかもしれませんが、美術陣ほんとうにお疲れ様でございました。

もはや申すまでもなくフルカラー、ワイドスコープ。まだCGは普及しておりません。三船はもちろん東郷さんです。63歳。ナチュラルにロマンスグレーになりました。目尻の皺が愛しいです。

今回の若手は(当然ながら)1980年代らしい顔ぶれですが、音楽の使い方がうまい舛田さんらしい人物設定です。したがいまして物語は兵学校ではなく海兵団から始まります。ようそろ。

いざ戦闘配置となるまでに何を描くかが戦記映画の肝ですが、そもそもバルチック艦隊は来るのか来ないのかとかそういう部分はもう東宝さんがさんざん描いちゃったので、違う着眼点で丁寧に艦上リアリズムをお届けいたします。ズンチャッチャ♪ 

時々おかへ上がるとめんどくさい場面になるのでしばらく我慢しましょう。女性も共感しやすい戦争映画を狙ったものと思われますが「ものすごく強気で、えらそうに男に依存する」という女の理屈がいかにも1980年代的でございます。三原順子(当時)の体当たりっぷりは見事です。

艦内の酒保が描かれているのは本当に珍しいですが、このへんの小道具の細やかさは、あるいは当時の日本の貿易黒字っぷりを反映しているのかもしれません。

新兵が可愛い顔してると危ないそうですが、そんな1983年らしさはなくてもいいです。明治三十八年版、鍵屋の辻。(ほんとにそういう話題が流行ってたんだなぁと変な感心)

アクションシーンも俳優の素の体力が試されるような迫力です。精神注入棒も大活躍しております。戦争ロマンを描きつつも反・軍隊というのも1980年代らしいところです。

終盤のスペクタクル性は、火薬使用量のすごさからいっても、場面の切り取り方からいっても、海戦映画史上空前のセンスの良さが投入されたと言うべきと思われます。

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Misha

Author:Misha
スマホ時代にさからう評論系長文ブログ。冷静に通読できる大人の読者様を想定しています。

「若い人」に直接呼びかける文章は、18歳以上のヤングアダルト対象です。高校生は受験を最優先してください。

書く人は、新旧とりまぜて映画とアニメを見ながら文芸書に取りくんでみたり、昔の漫画を思い出したり、お国の先行きを心配したりしております。

記事中の色つき文字は、映画中の台詞・挿入歌からの引用です。あらすじは、あまり申しませんので、楽しみに御覧ください。取り上げる作品は、暴力・エロスなど特殊な要素を含んでいることもあります。

ときおり、耽美・BL・同人・LGBTに言及します。いずれの分野からも、偏見と差別と自虐がなくなるといいと思っております。

「二次創作の責任を二十四年組に押しつけるな」「実在同性愛者に甘えるな」が基調です。

全体として、二十四年組ファンが社会学者に物申すという珍しい構図。一部同人を叱責することによって全体を守るという意図もあり、ときにかなり辛口です。

記事は時々予告なく手直し・削除・分割しております。保存は個人的閲覧の範囲で、お早めに御随意に。転載・改変利用は固くお断り申し上げます。

解題


Casketとは、玉手箱。

でも検索すると棺桶がならびます。来世まで持っていきたい好きな作品の記録帳とご理解ください。