記事一覧

むしろ、パロディに失礼です。~二次創作の自治を守るために必要なこと

学童期を脱した男性の鑑賞に耐えることを想定して制作されたSFアニメの好調と、同じ年齢層の女性を狙った美少年漫画の流行が同時に起きたので、混ぜてはいかんものを混ぜちゃったという同人がいたのです。どっかに。

それ自体は同人にとって自然なことで、むしろ「同人プライド」と言えるのです。

もともと漫画は「ポンチ絵」と呼ばれていた時代から、政治家をパロディにしていたものですね。だから漫画同人が、なんでも世上で流行しているものを取り入れて、パロディにすることは、正しいのです。

逆にいえば、そのパロディであることを充分に評価し、プロ作品とはおのずと違うと言えないことには、パロディのことで議論する意味はないです。むしろ、パロディに失礼です。

【パロディありき】

著作権に限らず、国家が知的財産権を保障する理由は「似たような商品によって本家本元が倒産しないように」です。

だから「競合するかどうか」は重要な判断ポイントであり、エクスキューズでもあります。

実際に混交が発生した時期というのは、題材となったアニメのほとんどがテレビオリジナルでした。だから漫画本としては競合しようがなかったのです。

ただし、キャラクター利用そのものをコントロールされる可能性はありました。だから隠語が発生したのです。アニメファンによる自主検閲・権利者への通報を避ける必要があったから「下手だから読まないでください」と言ったのです。

プロが自虐する筋合いなんかありません。

1980年代になると、漫画原作つきテレビアニメの時代になったので「アニメ化されるほどヒットした原作で、しかも読者の性別が違うばあい、同人誌は競合しない」という理屈が立つようになったのです。

(少年漫画本来の男性ファンが急にBLを好きになってしまい、パロディばかり売れて原作単行本が全く売れなくなったということはないからです)

でも、もともと(テレビが普及して)女性が男性向けを意図した群像劇も観るようになったから、そこからアイディアが生まれたという順序であって、理由は後づけなのです。

男性群像劇を、ふつうに「カッコいい」とか「誰がいちばん好き?」とか言いながら鑑賞していた女性も大勢いたはずです。ほんの一部が、それを「美少年ものと混ぜる」というアイディアをひじょうに面白がったに過ぎません。

それにまたフェミニストなどが理由を後づけしたので、モテない女性だけがそっちへ流れるという偏見も発生したのですが、根本的には「流行しているもの同士を混ぜる」というコラボ企画の面白さなのです。

フェミにまかせておくと「男性中心社会に対して物申したい若い女性が続々と少女漫画を見限ってBLにシフトしつつある」という一般論になってしまいますから、パロディであることは捨象されてしまうのです。

男性中心社会に向かって皮肉を言いたいだけなら、むしろオリジナル作品として堂々と上梓し、男性にも読ませてやったほうがいいことになります。

「なんで二次なの?」という疑問に対しては「金目」と言っても意味がありません。なんで売れるの? という新たな疑問が発生するだけです。

「だからただのエロw」と言えば、また話が戻っちゃうだけで、オリジナルのエロでもいいはずでしょ、となっちゃうのです。

ほんとうは、あらゆる理由は後づけで、男性向け男流作品としては絶対にあり得ない展開が、女性向け女流作品と混ぜることで生じることが面白いという、その「パロディであること」の純粋な面白さだったのです。

【共存を理解できなかった社会学者】

次の問題は、男性向けと女性向けを混ぜることは男性中心社会を否定しているのか肯定しているのかって件ですが、これはそもそも「それを決める必要がある」と思うこと自体がおかしいのです。

男性向けと女性向けでは着眼点が違う。この世には明らかに男性と女性がいて、違う価値観をもって共存している。

日本社会は、もともと武士政権成長の陰で古代的女神信仰(女性中心主義)を温存したという、中心を二つ持った楕円構造なのです。

そのことを認めてしまえば「ときどき部分的に交換して娯楽にする」という、文化史的意義における遊びであることが理解できるのです。理解できるというか、学問として成り立つのです。

ベルリンの壁が落ちたとき、世界中の学者が「自分はいつか世界同時革命が実現するというマルクス主義(の一部)に首まで浸かっていた」と気づいて愕然としたはずなんですが、情けないのは日本において「やおい論」というものが盛んになったのが、1989年11月よりも後のことであることなのです。

【と、弁護したうえで】

重要なことなので、また言いますが、二次創作は、許可されたんじゃないです。もともと「非親告罪にしないでください」というだけの話です。

つまり、「許可してください」ではなく、「許可できないのは分かってますが、逮捕しないでください」という、ものすごく微妙な話です。

総理大臣の一存で許可できるものなら、してもらっちゃえばいいです。実際には、著作権者によっては「だめ。ぜったい」って言う可能性があるわけです。

もしかしたら「俺自身がトラブルに巻き込まれる可能性がゼロになったほうが安心だから、完全にやめちまってくれねぇかな。同人もオリジナルで勝負するのが本当じゃん?」と思ってるプロのほうが多いかもしれないのです。

その心情を無視して描き続けることは悪いことなのかもしれない。でも逮捕しないでくださいという微妙な話なのです。その微妙さを正当化するために持ち出されるのが「表現の自由」であり、業界の自治を尊重するという発想です。小さな政府。レッセ・フェール。

逆にいうと、そういう大義名分がないことには、政府・一般国民としても「じゃあいいよ」と言ってやれないのです。

実情だけぶっちゃけられても「じゃあいいよ」とは言ってやれないのです。正規雇用が少なくて、おカネに困ってるのは、それこそみんな同じだからです。

ここで問題となるのは「そんな美名では納得せずに警察官を動員する(=税金を使う)ほど悪いことかどうか」です。

ごく単純に、警察官が出動すれば、そのぶんのガソリン代や宿泊費用がかかるわけです。容疑者として拘束される人が増えれば、その食事だけでも拘束したほうが保障してやることになります。

もし「年寄りの全財産を奪って生活できなくさせた。若者をクスリ漬けにして破滅させた」という問題だったら、シンジケートの自治を認めるとか言っちゃいられません。

だから「二次創作は、それに関わる者の自治が認められないというほど悪いことではないです」と言い続ける必要があります。

冗談にも「二次創作は麻薬w」とか言っちゃいけません。しゃれが通じない相手を相手にしていると思いましょう。

くりかえしますが、べつに許可されたわけではありません。良いこととして奨励されるようになったわけでもありません。どっちかってぇと、やっぱりやらないほうがいいことであることに変わりはないのです。

しかるべき対価を支払って翻案権を取得したというのではなく、アマチュアの「遊び」とか「販売ではなく頒布」とかいって言い訳しなければならない立場である以上……

「二次創作同人でございます」といって、世間様に対して大きな顔ができた義理ではないことだけは覚えておきましょう。

(あと単純に、おカネの自慢をすると、身近なおともだちからも反感を買いますし、詐欺などの被害にも遭いやすくなります)

Related Entries

SEARCH

Profile & Caution

Misha

Author:Misha
スマホ時代にさからう評論系長文ブログ。冷静に通読できる大人の読者様を想定しています。

「若い人」に直接呼びかける文章は、18歳以上のヤングアダルト対象です。高校生は受験を最優先してください。

書く人は、新旧とりまぜて映画とアニメを見ながら文芸書に取りくんでみたり、昔の漫画を思い出したり、お国の先行きを心配したりしております。

記事中の色つき文字は、映画中の台詞・挿入歌からの引用です。あらすじは、あまり申しませんので、楽しみに御覧ください。取り上げる作品は、暴力・エロスなど特殊な要素を含んでいることもあります。

ときおり、耽美・BL・同人・LGBTに言及します。いずれの分野からも、偏見と差別と自虐がなくなるといいと思っております。

「二次創作の責任を二十四年組に押しつけるな」「実在同性愛者に甘えるな」が基調です。

全体として、二十四年組ファンが社会学者に物申すという珍しい構図。一部勘違い同人を叱責することによって全体を守るという意図もあり、ときにかなり辛口です。

記事は時々予告なく手直し・削除・分割しております。保存は個人的閲覧の範囲で、お早めに御随意に。転載・改変利用は固くお断り申し上げます。

解題


Casketとは、玉手箱。

でも検索すると棺桶がならびます。来世まで持っていきたい好きな作品の記録帳とご理解ください。