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1951年10月、市川崑『ブンガワンソロ』新東宝

ヒロインの美しさにまず瞠目させられます。マレー方面を描いた映画もいろいろありますが、この発想はなかった。

戦前に流行したミュージカル映画の一つではあって、本来の民族意識からいうと御都合主義なのでしょうが、映画としての見応えは高いです。

いわくつきの作品のようですが、脚本が市川夫妻であることには違いなく、ロマンスらしさに至るまでの戦争諷刺描写は骨太です。クライマックスも豪快です。しかも女性に優しい清潔さがあるのも市川ものの良いところ。

池部良の美貌が別格であることもよく分かります。確かにこの人は日本映画界屈指。一代を築いた美男スターでした。

いっぽう、翌年には『生きる』でメフィストフェレス役を見せてくれる伊藤雄之助の怪優ぶりもすでに確立していたようです。森繁久弥は若すぎて誰だか分かりません(^^;)

1960年代小津映画常連の高橋トヨは豊子さんだったみたいです。藤田進はちょっと珍しい役。感情が自然に変化して行く様子が彼らしいです。山形勲はやや悪役。特筆すべきは妹ちゃんで、愛らしいキャラクター性がアニメを連想させます。

こういう少女キャラクターは、グリフィス作品に出てきたのが印象的ですが、小津・溝口・黒澤・木下・篠田など、他の日本監督作品には登場しないように思います。

村落が霧に包まれた画は模型使用の擬似ロケーションかと思われますが、たいへん美しいです。

その後、リメイクということがしにくくなってしまった作品の一つではあるのでしょう。だからこそ、物語(脚本)の面白さという点からだけでも、一見以上の価値はあります。


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Misha

Author:Misha
スマホ時代にさからう評論系長文ブログ。冷静に通読できる大人の読者様を想定しています。

「若い人」に直接呼びかける文章は、18歳以上のヤングアダルト対象です。高校生は受験を最優先してください。

書く人は、新旧とりまぜて映画とアニメを見ながら文芸書に取りくんでみたり、昔の漫画を思い出したり、お国の先行きを心配したりしております。

記事中の色つき文字は、映画中の台詞・挿入歌からの引用です。あらすじは、あまり申しませんので、楽しみに御覧ください。取り上げる作品は、暴力・エロスなど特殊な要素を含んでいることもあります。

ときおり、耽美・BL・同人・LGBTに言及します。いずれの分野からも、偏見と差別と自虐がなくなるといいと思っております。

「二次創作の責任を二十四年組に押しつけるな」「実在同性愛者に甘えるな」が基調です。

全体として、二十四年組ファンが社会学者に物申すという珍しい構図。一部勘違い同人を叱責することによって全体を守るという意図もあり、ときにかなり辛口です。

記事は時々予告なく手直し・削除・分割しております。保存は個人的閲覧の範囲で、お早めに御随意に。転載・改変利用は固くお断り申し上げます。

解題


Casketとは、玉手箱。

でも検索すると棺桶がならびます。来世まで持っていきたい好きな作品の記録帳とご理解ください。