2008年『レスラー』

  08, 2013 23:17
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まずこれはプロレスの商業主義を告発し、こんな残酷な娯楽は廃止しなければならないと訴える映画じゃないです。

こんなことに命を賭ける馬鹿がいるから皆で応援してやろうぜって映画です。楽屋におけるレスラー同士の友情が泣かせます。

てっきり「とっくに引退したレスラーが一念発起して復活、家族との絆も取り戻す」って話だと思ってましたが真逆でした。堕ちていく一方(・∀・)

でも落ちていけるのは高いところにいたからで、20年現役だったのですな、このオッサン! 彼に憧れてこの道へ入ったのであろう若いレスラーが、彼から誉め言葉をもらってはにかむ顔の愛らしさ、そいつの若さが眩しくてまっすぐ見上げることのできないロークの表情がたまらんです。

孤独に耐えて体を作るというと『タクシードライバー』を思い出しますが、あの痛々しい若さを思い出せば、社会も映画界そのものも歳をとったのだな、と。1980年代にこだわり続ける贖罪の羊。HR/HMが泣ける。

ロークは女にチヤホヤされるのが嫌だったんだと思います。ボクサーの腫れた目や、つぶれた鼻が好きだったんだと思います。女性ファンから「貴男、可愛いわね」と言われて「サービスするぜ」と答えてやるより、男性ファンから「兄貴、カッコいいぜ。強いんだろ?」って言われて「おう、強いぜ(ニヤリ)」って答えたかったんだと思います。

やりたかったことが全部やれて、何もかもさらけ出して、役者冥利、男冥利な役だったと思います。

中年男の毛穴の荒れた顔、ステロイドですさんだ筋肉、サポーターとテーピングだらけのたるんだ皮膚、きったねぇ尻。映像はドキュメンタリータッチなんて言うも愚かな生々しさを狙った手ブレだらけ、素人くさい暗い色調・ザラザラした質感、そっけない演出、ブツ切りの編集。すべてがいい感じです。よくよく男のロマンを分かった監督さんです。

最終戦の入場シーン、死に場所を見つけた男の晴れやかさに涙が溢れました。映画中盤では凶器を使用するひどい試合をやってましたが、この最終戦は「これぞプロレス」という古典的な技の応酬。「俺にまかせろ」盟友アヤットラーの呼吸を心得たヒールぶりが、また感涙を誘います。

役者も役者馬鹿ですが監督もプロレス馬鹿です。死ぬまでやってるといいです(ノ´∀`*)

というわけで、ロークの潔い役者馬鹿ぶりが目立つ映画ですが、お相手役の年増女優も熱演です。体でしか稼げない男と女。てっきり「エイドリアーーン」的展開かと思ってましたが、いやぁよかったです。

20年寝かせたウィスキーにあえてビターシロップを振りまくったカクテルみたいなもんでしょうか。「角砂糖入れるの忘れた」みたいなもんですが、上等です。乾杯。



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