【金のためにエロスを描くということは】

  23, 2014 10:23
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原稿用紙に「か」「ね」と書くことではない。漫画のコマ枠の中に「えろ」と書くことではない。

好色文芸および漫画のパターンは、いくつか考えられる。

・十代の少年または少女が夏休みの間に初めての体験に夢中になる姿を描く。
・淡白な性しか知らなかった人妻または人夫が不倫に夢中になる姿を描く。
・酔狂な老人によって鞭を持たされた乙女または若者が立派なドミナントに成長する姿を描く。
・卑劣漢または痴女によってマゾ調教されても誇りを失わない貴婦人または紳士を描く。
・あっさり調教されて喜悦の声をあげる貴婦人または紳士を描く。

それぞれ、男男、男女、女女の組み合わせが考えられる。さらに男装者・女装者を加えると、バリエーションが増える。

サド侯爵なら、ぜんぶ書き連ねたかもしれない。団鬼六は最後に仲良くなってしまうパターンを嫌った。田亀源五郎は女性をも魅力的に描くけれども、調教される話は描かないんじゃないかな……

全ての作家が全ての分野を描けるものなら、編集者は苦労しない。マルチタレントを5人ほど揃えてシフトを組めば、毎月かならず違う作家による青春系・ハーレクイン系・SM系・ゲイ系・百合系を1本ずつ発行できる。

それがなかなかそうは行かないから、それぞれの分野から新人を発掘し続ける必要がある。

ストレート男性がゲイのツボを突いたつもりで描いても、うまく行かないことはヤマジュン漫画が証明した。

ストレート男性が女性の喜ぶツボをよく知っていて、描けるものなら、男流ハーレクインや男流レディコミが、もっと売れている。

女性がゲイの喜ぶ作品を描くこともできなくはないけれども、それに挑戦する作家のほうが多数派というわけではないことは、ボーイズラブ分野の実情が証明している。

要するに女性(自分自身)好みの少女漫画的な絵柄・叙情的な文章しか書けない人は、ゲイ向け作品の制作に向いていない。

いざ書こうと思ったとき、さまざまな登場人物・筋立て・絵柄・文体の組み合わせの中から「これは面白そうだ! 書いてみよう!」と自分の胸を燃やすものがある。

それを、創作動機という。

「そんなもの無かった。友達が貸してくれたボーイズラブを読んでいるときに、友達が『書いてみなよ』と言ったので、友達の真似をして書いただけ。友達が『大丈夫だよ』と言ったので、売りに行っただけ」

という人は、「人生で最高に価値あることは、友達に合わせることだ」という信念を自己表現したのだ。

元々ボーイズラブなんて好きじゃなかった、アニメも好きじゃなかったという人が、それでも当時は書いていけたとしたら、友達が何くれとなく教えてくれたからだ。次はこんな話はどうだろうという相談に乗ってくれたからだ。すごい、すごいと面白がってくれたからだ。

金のためなら、なぜ今も全ての旧世代同人が最新流行の話題に便乗して自作を発表し、効率よく稼ぐことを続けていないのか。

……友達がやめてしまったからだ。

意欲が枯渇して、書いていくことができなくなったからだ。

そこにあったのは、金のためなら何でも書くというプロ根性ではなく、「みんな一緒」という気分を味わうことのできた、青春時代だ。


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