【長い黒髪なびかせて】

  29, 2014 10:38
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1970年代後半の耽美漫画には、欧米在住の白人成人男性でありながら、平安時代の女房みたいな黒髪を誇る人物が、ときどき登場したものだ。

さすがにイギリスのロックバンドにも、あれはいなかった。古代ギリシャ神話を題材にした西欧絵画にも、皆無と言ってもいいだろう。もちろん、実写洋画俳優にもいない。

金髪美少年のほうは、アンドレセン、またはピーター万歳でいいかもしれないが。

イメージモデルの存在しない成人男性。

いや、しないことはなくて、顔立ちそのものはデヴィッド・ボウイだったかもしれない。

黒髪のボウイ。

西欧を舞台にした物語の中に唯一まぎれこまされた「和」の要素。

平安時代の女房でもっとも有名なのは、父親を嘆かせるほどの才能を発揮した、文筆家女性たちだ。

ここに日本人女性作家(漫画家)の自己愛を見ても、いいだろう。

少女誌に掲載されたから「少女の自己表現」だと思うと、ちょっと分析がややこしくなる。

当たり前に「作家の自己表現」だと思えばいいと思う。

純文学者だって原稿を売って生活していた。

読者ウケを狙った商業作品には、作家の人間性がまったく反映されていないと思う必要はない。

反映されていないことがあり得るとしたら、それは、明らかに追随者によって表面的な模倣がなされている時であって、最初に思いついた作家にとっては、どんなキャラクターも発表してみない内は読者に受け入れられるかどうか分からない。

思いついた瞬間、筆を降ろした瞬間は、自分自身の中から湧き起こる霊感のみに従っているはずだ。

その点で、自分自身のことばかり恥ずかしげもなく描いた純文学者たちと同じだ。

誰しも、自分自身の信じるところを描いて、それを世に問う他、方法がない。


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