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【SFの基本は風刺精神。】

宮崎駿監督のアカデミー名誉賞受賞を報じるのと同じ夕刊に、世田谷で開催中のSF展の紹介記事が載った。静岡新聞、GJ。

両者に共通する言葉は「現代文明への批判」だ。地震が来たら原発どーすんだという課題を抱える静岡県だから、文明批判の言葉には、記者も熱が籠もる。

1974年、宇宙戦艦ヤマトは、オイルショックに喘ぐ大地を蹴って、公害の空を飛んだ。その雄姿には、じつは……

「戦後の日本が築き上げた現代文明なんて、全部まやかしで、役立たずだ。あの困難な時代に巨大戦艦を造り上げた人々のほうが立派だった。男気があった」

という風刺が籠められている。

しかも、そこに乗り組んだ若者がビートルズそこのけの茶髪で、嫁さんになる女性は金髪だったんだから、日本人の(旧世代の)男女が丸ごと否定されている。

そもそも現代文明というのは、西欧産業革命・近代世界システムに根ざしている。

それが蓄積した富と武力に大敗した日本人の子孫たちが、西欧近代の行く末を冷たい目で見守り、「いずれダメになる」と予言することには、意味があった。

この精神は、日本の純文学の精神でもある。

明治の文学者は、西欧人の書いたものを読んで「俺たちに何が書ける?」と考えた。おおいに参考になったのは、ロシア人が書いたものだった。

ロシアとは、英仏に比べて、近代化に遅れを取った国だ。

それが西欧式システムの端っこに組み込まれ、搾取されることを回避しようとして、新しい価値観を採用した。日本人は強い関心をもって見守り、研究した。

資本主義は進化すると、やがて共産主義になる、と信じられた。では、進化した共産主義は、どこへ行くのか。

ユートピアか、デストピアか。

だから、日本ではSFが盛んなんである。マルキシズムが盛んだったのと同じ時代に盛んだったんである。とくに若者に受け入れられたんである。

若者は、つねに大人が成し遂げたものに対して、批判的であるから。

「くだらない」と言われた手塚は、ファシズムと仏教を描き、当初は理解されなかった駿は、アジアの自然を賛美し、零戦を描いて筆を擱いた。

そしてじつは、女性がこの風刺精神を正しく受け継ぐと、高らかに謳い上げられた男のロマンに対して、「まァ素敵ね。こちらも負けてはいられないわ。それなら、こっちは女のロマンよ」と言い出す……

そして、アニメ化した日本SFという流れの上層を、今もなお滔々として満たし続けるのが「ジブリ」という泉に発する清い流れだとするならば、いつの間にか下層のほうで泥を巻き上げながら驀進していたのが「人間なんて、どうせエロしか求めてないんでしょ」という根源的な批判精神だった。

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Misha

Author:Misha
スマホ時代にさからう評論系長文ブログ。冷静に通読できる大人の読者様を想定しています。

「若い人」に直接呼びかける文章は、18歳以上のヤングアダルト対象です。高校生は受験を最優先してください。

書く人は、新旧とりまぜて映画とアニメを見ながら文芸書に取りくんでみたり、昔の漫画を思い出したり、お国の先行きを心配したりしております。

記事中の色つき文字は、映画中の台詞・挿入歌からの引用です。あらすじは、あまり申しませんので、楽しみに御覧ください。取り上げる作品は、暴力・エロスなど特殊な要素を含んでいることもあります。

ときおり、耽美・BL・同人・LGBTに言及します。いずれの分野からも、偏見と差別と自虐がなくなるといいと思っております。

「二次創作の責任を二十四年組に押しつけるな」「実在同性愛者に甘えるな」が基調です。

全体として、二十四年組ファンが社会学者に物申すという珍しい構図。一部勘違い同人を叱責することによって全体を守るという意図もあり、ときにかなり辛口です。

記事は時々予告なく手直し・削除・分割しております。保存は個人的閲覧の範囲で、お早めに御随意に。転載・改変利用は固くお断り申し上げます。

解題


Casketとは、玉手箱。

でも検索すると棺桶がならびます。来世まで持っていきたい好きな作品の記録帳とご理解ください。