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【星新一の手塚治虫評から二次創作へ話をつなげる試み。】

「星は手塚作品の特徴を『構成のしっかりしている点にある。(中略)つまり、手塚さんが活字によって小説作法を完全に自分のものとし、それを漫画のなかに展開しているからではないだろうか』と評し、手塚漫画に文学性をみていた。」

 (2014年8月29日付 静岡新聞夕刊『日本SF展・SFの国』紹介記事より孫引き)

この「文学性」を、ひらたく言うと「山も落ちも意味もある」ってことになるのでしょう。

『フクちゃん』の原作者が、「若い(漫画家志望の)人が自分の後ろについて来ていると思っていたら、誰もいなくて、隣の山に手塚治虫という大将がいた」と言っていた。

でも新聞紙上の四コマ漫画は続いている。サザエさんも、すたれてはいない。『クレヨンしんちゃん』は、この路線上にいると思う。

日本の漫画には、いくつかの流派のようなものがある。

「手塚流」というのが、じつは眼が縦方向に大きく、頬のふくよかな少年少女を描いている点で、現代の「萌え」アニメまで真っ直ぐにつながっていると思う。

その分派である石ノ森流の高弟だった竹宮恵子の作品には、立派な山も落ちもあった。大作『地球へ…』を、誰も「SFを理解していない」とは言わないだろうと思う。

『風と木の詩』は文学だ、という言い方も、文学性がある・文学をしっかり理解した上で書いているという誉め言葉であって、文学に対して後発の漫画という分野が、先輩格と比べられて「よく成長したね」と認められている。

(べつに「漫画じゃなくて文学だ」と漫画を否定しているわけではないから、怒るのは筋違い。)

1970年代と、1980年代の境目ごろから、一部の女性の間から目立ってきたとされる奇矯な漫画群は、みずから「山も落ちもない」と称したそうだけれども、これは流儀の家元の言葉に逆らったという意味になる。

そう考えると、これは単なる自嘲ではなく、独立宣言ととらえるのがいいと思う。

「神と仏が人間界へ降りてきて、共同生活をしながら、人間世界の実情を紹介していく」

……どんな痛烈なSFかと思うと、のんびりしたブログみたいな作品。

そういうものが生まれてきた下地をさかのぼれば、「山も落ちもなくても、えらい男の人が評価してくれなくても、自分が面白いと思い、同性の友達が喜んでくれるものを自由に描きたい」という心性があっただろう。

むしろ、これこそ批判精神の表れではなかったか。


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Misha

Author:Misha
スマホ時代にさからう評論系長文ブログ。冷静に通読できる大人の読者様を想定しています。

「若い人」に直接呼びかける文章は、18歳以上のヤングアダルト対象です。高校生は受験を最優先してください。

書く人は、新旧とりまぜて映画とアニメを見ながら文芸書に取りくんでみたり、昔の漫画を思い出したり、お国の先行きを心配したりしております。

記事中の色つき文字は、映画中の台詞・挿入歌からの引用です。あらすじは、あまり申しませんので、楽しみに御覧ください。取り上げる作品は、暴力・エロスなど特殊な要素を含んでいることもあります。

ときおり、耽美・BL・同人・LGBTに言及します。いずれの分野からも、偏見と差別と自虐がなくなるといいと思っております。

「二次創作の責任を二十四年組に押しつけるな」「実在同性愛者に甘えるな」が基調です。

全体として、二十四年組ファンが社会学者に物申すという珍しい構図。一部勘違い同人を叱責することによって全体を守るという意図もあり、ときにかなり辛口です。

記事は時々予告なく手直し・削除・分割しております。保存は個人的閲覧の範囲で、お早めに御随意に。転載・改変利用は固くお断り申し上げます。

解題


Casketとは、玉手箱。

でも検索すると棺桶がならびます。来世まで持っていきたい好きな作品の記録帳とご理解ください。