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【女のロマンの定型化。】

青池保子『イブの息子たち』を読むと、すでに冒頭で「古代ギリシャに憧れ、青年美を称賛する西欧貴族階級出身の男性詩人の倦怠的・美的な生活」が、ありがちな定型とされており、笑いの種とされていることが分かる。

主人公の名は、バージル。ヴェルギリウスの英語形だ。彼の居室には古代ギリシャふうの青年裸像が、とりとめもなく飾られている。(整理整頓は苦手)

そのような生活様式の発想元は、ワイルドであり、ヴェルレーヌであり、コクトーであり、アッシェンバハであったろう。最後の人物は架空の存在だけれども、どっちみち20世紀後半の女性が、実際に戦前の詩人などに面会することは出来ないのだから、同じことだ。

彼らは男と女の中間的存在であり、彼ら同士で惹かれ合うのが習い性である……という前提の元に、現実社会における差別を意識することなく、少年愛または青年愛の情緒を楽しむことができる仕掛けとなっている。

……例えて言うと、ディズニー作品において、7人のドワーフや魔女の演技を楽しむが、実際に短躯である民族や、魔女の疑いをかけられた女性がどのような扱いを受けたか、文献を当たってみることを求められないようなものだ。

日本の少女漫画にも、修道尼の経営する孤児院を美化した作品(水木杏子・いがらしゆみこ『キャンディ・キャンディ』)が存在した。

青池が「そのようなものとしての衆道趣味を提唱した」と言うよりは、すでに一部の女性の間に流布していた稚児さん趣味を、彼女自身がそのように「罪のないフィクション消費」として理解したといったところだろう。

日本の漫画家というのは、SF作家の流れを汲んでいる。すなわち、その根本には現代文明への風刺精神がある。

漫画家の醒めた目は、耽美の流行の質を見切ったのだろう。なかでも青池保子という人は、そのような醒めた滑稽味を描くことの上手い人だった。

今も上手い。

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Misha

Author:Misha
スマホ時代にさからう評論系長文ブログ。冷静に通読できる大人の読者様を想定しています。

「若い人」に直接呼びかける文章は、18歳以上のヤングアダルト対象です。高校生は受験を最優先してください。

書く人は、新旧とりまぜて映画とアニメを見ながら文芸書に取りくんでみたり、昔の漫画を思い出したり、お国の先行きを心配したりしております。

記事中の色つき文字は、映画中の台詞・挿入歌からの引用です。あらすじは、あまり申しませんので、楽しみに御覧ください。取り上げる作品は、暴力・エロスなど特殊な要素を含んでいることもあります。

ときおり、耽美・BL・同人・LGBTに言及します。いずれの分野からも、偏見と差別と自虐がなくなるといいと思っております。

「二次創作の責任を二十四年組に押しつけるな」「実在同性愛者に甘えるな」が基調です。

全体として、二十四年組ファンが社会学者に物申すという珍しい構図。一部勘違い同人を叱責することによって全体を守るという意図もあり、ときにかなり辛口です。

記事は時々予告なく手直し・削除・分割しております。保存は個人的閲覧の範囲で、お早めに御随意に。転載・改変利用は固くお断り申し上げます。

解題


Casketとは、玉手箱。

でも検索すると棺桶がならびます。来世まで持っていきたい好きな作品の記録帳とご理解ください。