【ビール瓶の持ち方に見る日本企業文化の武士っぽさ。】

  12, 2014 20:30
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右利きの人が右手で物を差し出すのは当たり前です。

それに対して「拙者に対して無礼である。貴様には謀反の心がある!」と言うのは、どんな人か。

農村の視察に来た代官に対して、農民代表である庄屋さんがお酌をした時、という場面が浮かびます。

言われた庄屋さんは、びっくりして「どういう訳ですか」と尋ねます。すると代官は咳払いして言うわけです。

「貴様は農民だから知らないだろうから、特別に教えてやるが、右手を前にして構えるのは、刀を持つときの作法である」

庄屋さんは膝を打って応えるわけです。

「なるほど、それで分かりました。そこに気がつくお代官様の炯眼に感服いたしました。これからもよろしくご指導ください」

ってね。

もちろん例え話です。ビール瓶を持った庄屋さんですから。

武士が本当に刀を帯びていた時代に、武士同士でこれを言っていたら大変です。「無礼とは無礼である」という反論によって、本当に刃傷沙汰となる可能性もあります。そんな遺恨でいちいち出陣されては、ご家中も領民もたまりません。

かえって武士同士は和気あいあいとしていたでしょう。他の身分に対して威張るのです。

では、そんな「難癖」というべき作法を現代にまで持ち込んで威張りたがるのは誰か。

会社が何億円も出してヘッドハントした若者に対して「きみは無礼である。ものを知らない」と言って、「ばかばかしいんで独立します」と言われちゃ自分が困ります。

つまり、反論を予想していない人。立場を利用して威張る上司と、ふつーの社員。お金持ちのお客様と、営業マン。

後者としては「確かに私はものを知りません。細かいところまで気をつけますので、出世・契約のほうをよろしくお願い致します」って意味になります。

だいたい日本式の宴会は、現代では長卓にご馳走がならびますが、本来は「お膳」が一人ずつに提供されたはずです。

つまり、上様が御家人を呼んで、食わせて進ぜる形です。社会保障が充分でなかった時代には、実力者が若い奴を集めて、具体的に「食わせてやる」ことが非常に重要でした。

その形が踏襲されているので、ときどき「武士の作法」が顔を出すわけです。

欧米式は、お酌をしません。そもそも席を立つのがマナー違反です。でなきゃ最初から立食式。飲食はマイペースです。他人の自由を妨げちゃいけません。酒類を注ぐのは専門家の仕事です。他人の仕事を取っちゃいけません。

つまり、日本の会社の宴会は、社員一同で「戦国コスプレ」をやってるようなものです。

なお、武士の時代と現代をつなぐのは、実際に武士の誇りを抱いていた戦中の士族(士官)たちでしょう。

彼ら、または彼らに気を使っていた下士官が、復員後に戦後復興の中心となったのが、今に至る日本企業文化の武士っぽさの根底にあると思います。

なお、若い女性が「イケメン」化させた戦国武将キャラクターをもてはやすのは、彼女たちが戦国武将に憧れて「おとなしい嫁になりたい」と思い始めたことを表すのではなく……

戦国武将および武士社会が、彼女たちに対して支配的・圧力的な印象を持たなくなったことを示します。

ということは、武士っぽさに憧れる企業文化も、もはや彼女たちに対して支配性を持ちません。

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