記事一覧

【美少年をテーマにした漫画を発表した時、二十四年組は成人していました。】


男女を問わず少年美を愛好する人にとっては、それが限界のあるものであることが、比喩でも何でもなく現実として了解されます。

鬚のない頬の美しさや、ボーイソプラノの美しさは、稲垣足穂も書いた通り、当人の成長によって必ず失われるものだからです。

愛好者は、当人の成長を祝福するからこそ、その「時分の花」に断腸の思いで別れを告げねばなりません。

これを象徴表現すれば「少年キャラクターが肉体的に死を迎える物語」となります。

この死は、あえて例えれば自然界による暴力です。運命の残酷です。だから少年は「人間の誰かの手にかかる」のではなく、西風を象徴する神や、泉を象徴する妖精や、原因不明の病気によって、抵抗の声を挙げる間もなく、この世から消滅します。

ヒュアキントスは、もともと春の芽吹きを象徴する植物神であり、人間に豊作を約束する生命の神でした。呉茂一によります。

それを大地の女神の娘ではなく息子として象徴表現し、美しいまま亡くなっては蘇るとしたのは、当時の詩人の少年趣味であり、自己愛でもあったでしょう。

言葉はロゴスであり、それを操るのは基本的に男性の仕事でした。白洲正子は同性愛と書いて、ナルシズムとルビを振っています。

急逝した美少年が、香り高く季節を告げる藤や菊の花となって永遠の命を得る物語を描いた花郁悠紀子は、おどろくべき若さで本質を捉えていました。

ただし、成人しています。少女のようで、少女ではないです。

すでに少女として少年と親しむ権利を失い、彼の成長につき合って、いずれは結婚するという道を封印し、漫画家として自立する(=独身を貫く)覚悟をした女性たちによって描かれたのが、1980年代初頭までの少年趣味でした。

寺山修司が竹宮作品を読んで「少女の内面」と言ったのが話をややこしくしてくれたわけで、当時の男性には「嫁に行った女は大人で、もう漫画なんか読まない。嫁に行かない女は実年齢にかかわらず子供で、いつまでも漫画なんか読んだり描いたりしている」という意識が残っていたのでしょう。

女性のほうも「結婚しない女は一人前ではない」という差別意識を受け入れており、フェミニズム学者でさえ自分自身を少女と混同しました。

夜の繁華街へ飲みに出かけて、他の素人客へ馴れなれしくプライベートな話題で話しかけたり、議論を吹っかけたりすることは、大人の粋な遊びとは申せません。

寺山発言の時点で、「これは結婚せずに大人となる道を探る新時代の女性による、同世代の女性に読ませるための自己表現であり、新しい大人のための雑誌を創刊すべきだ」とでも言っていれば、その後の展開が違ったかもしれません。



Related Entries

SEARCH

Profile & Caution

Misha

Author:Misha
スマホ時代にさからう評論系長文ブログ。冷静に通読できる大人の読者様を想定しています。

「若い人」に直接呼びかける文章は、18歳以上のヤングアダルト対象です。高校生は受験を最優先してください。

書く人は、新旧とりまぜて映画とアニメを見ながら文芸書に取りくんでみたり、昔の漫画を思い出したり、お国の先行きを心配したりしております。

記事中の色つき文字は、映画中の台詞・挿入歌からの引用です。あらすじは、あまり申しませんので、楽しみに御覧ください。取り上げる作品は、暴力・エロスなど特殊な要素を含んでいることもあります。

ときおり、耽美・BL・同人・LGBTに言及します。いずれの分野からも、偏見と差別と自虐がなくなるといいと思っております。

「二次創作の責任を二十四年組に押しつけるな」「実在同性愛者に甘えるな」が基調です。

全体として、二十四年組ファンが社会学者に物申すという珍しい構図。一部勘違い同人を叱責することによって全体を守るという意図もあり、ときにかなり辛口です。

記事は時々予告なく手直し・削除・分割しております。保存は個人的閲覧の範囲で、お早めに御随意に。転載・改変利用は固くお断り申し上げます。

解題


Casketとは、玉手箱。

でも検索すると棺桶がならびます。来世まで持っていきたい好きな作品の記録帳とご理解ください。