【1946年、大映『七つの顔』】

  17, 2015 12:13
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冬休み企画、その3。

オーソン・ウェルズがいて、多羅尾伴内がいて、フィルム・ノワールがあって、ルパン三世がいて、そのアニメ化があって、江戸川コナンがいて、猫の恩返しもある。

アニメは最初からコピーのコピーのコピーです。コピーであることが悪いのではありません。コピーして出来たものの質が低いときが問題なのです。

人材をゲーム業界に取られている、パチンコの仕事を受けることで精一杯なんて事情があるのかもしれません。

質の高いオリジナルアニメを製作したければ、ファンによる出資を募って、新しい会社を起ててしまうのが良いのかもしれません。

さて、映画。

小夜更けて、懐かしのタンゴ。

のんびりした娯楽劇。たぶんサスペンス。変装の得意な探偵によるダイヤモンド盗難事件解決の顛末。

現代の眼で見るとコスチュームプレイですが、「今年の5月に南方から復員してきた」という台詞があるので、1946年当時の風俗をそのまま撮ってるらしいです。

冒頭の歌劇団ステージ風景には、戦前と同じレビューやタンゴの名曲をふたたび楽しめる時代が来たことの喜びに溢れていると思います。昔の女優さんは美しいです。ドレスやハイヒールがロマンチックです。

物語の背景が瀟洒な洋館であるのも嬉しいところです。良家の婦人はショパンが弾けるものだったらしいです。

片岡千恵蔵扮する探偵の、ややコミカルな演技とか、早苗嬢の芝居が古い時代劇調とか、鼻白む部分もありますが、じわじわ面白くなるので我慢して観ましょう。後半へ至ってアクション場面も登場します。車両の型のクラシックぶりが良いです。

じじむさい田舎っぺェが歌姫に惚れられるのは男冥利で、観客を楽しませたでしょう。女優の活躍を奨励するとともに、なにげに普通選挙のキャンペーンにもなっており、戦前的ハードボイルドと、おそらく浅草ふうコントと、新時代の融合により、質の高いエンターテインメントが誕生したということなのだろうと思います。

表現は抑制が効いており、過度の暴力も性もありません。印象としては児童文学の読了感に近いです。この品の良さは現代にも復活してほしいと思います。

『支那の夜』でもそうでしたが、煙草が男優に良い間合いを与えています。

女優に副流煙を吸わせないでやってほしいもんだなとは思うので、現代の実写では再現しないほうが良い要素ですが、惜しいです。これこそアニメで再現して、「大人向け」と銘打ってしまっても良いのではないかと思います。

日本の成人向けとは、都会へ職を求めて集まったヤングアダルト向けという意味があって、もっと年上の人が見ると騒がしい感じがするものです。

これは江戸の頃から地方の若者を集めてきた首都の性質上いたし方ないのですが、定年を迎えて心静かにミステリーを楽しみたいという、真の大人向けのアニメというのも、そろそろ登場しても良いかと思います。

七つの顔を持つ男の話に戻ると、終盤のアクション場面は、これ見よがしな移動放送機器など、後のスパイ映画や特撮ドラマ、宮崎アニメに通じる要素もあり、楽しいです。サイドカーつき警察オートバイも拝見できます。

ラストシーンは、じつに爽快です。ネタバレしたくないです。ご覧ください。





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